p.95 抽出テキスト
に挿管群であった.注意しなければならないことは,FIO2が40%以上でPaO2<60mmHg と定義されるような中等度以上の肺損傷を有する症例は研究から除外されていることである.肋骨骨折患者にCPAP を実施する場合,侵襲的人工呼吸の場合と同様の気胸をきたすリスクを認識することが重要である. 1998 年,Antonelli ら3)は急性呼吸不全の64 例の患者においてNPPV 群32 例と気管挿管群32 例を比較したランダムコントロールスタディを行い,NPPV でも低酸素血症の回復は挿管に劣らず,ICU 滞在日数はむしろ短縮され(9 日vs. 16 日),感染による合併症も少なかった(38%vs. 66%)と報告した.多くの症例は内因性疾患であるが,胸部外傷症例がそれぞれの群に4 例ずつ含まれている. 1998 年Gregoretti ら4)は,22 例の急性呼吸不全を伴う外傷患者を対象にほぼ同じ呼吸管理条件で,気管挿管からNPPV に変更(EPAP:5.8 vs. 5.2cmH2O,IPAP: 13.5 vs. 12.8cmH2O)したところ,酸素分圧や呼吸パター ンの改善に遜色なかったと報告した. 1999 年,Beltrame ら5)は急性呼吸不全を伴う46 例の外傷に対してNPPV を行い,33 例(72%)において成功したと報告した.外傷の内訳は胸部外傷11 例,頭部外傷8 例,腹部外傷6 例,脊髄損傷6 例,多発外傷8 例,広範囲熱傷7 例であった.観察項目はP/F 比,呼気のVT (tidal volume),呼吸数であり,P/F 比は152.4 から 277.9 に,VT は356.1mL から648.1mL に,呼吸数は 31.4 回から20.4 回に改善した.しかしなが ら,広範囲熱傷による急性呼吸不全の症例群では,失敗例が成功例を上回っていた.外傷症例の選択によっては,呼吸不全の治療がうまくいく可能性を示唆した. 1998 年,Abisheganaden ら6)は多発性骨髄腫に伴うフレイルチェストの1 例にNPPV を施行し,侵襲的な呼吸管理を回避できたと報告した.また,2000年,Sivaloganathan 7)は交通外傷によるフレイルチェストの1 例に対して,NPPV による呼吸管理によって,症例は順調に経過し侵襲的な呼吸管理を回避できたと報告した.さらに2000 年,Garfield ら8)は交通事故で重症な胸部外傷(左フレイルチェストと右肺挫傷)の35 歳の症例に対して,第10 病日まで気管挿管で管理を行い,その後はNPPV に移行した結果,早期にICU から退室し,合併症の発生を予防できたと報告した. 2000 年,長谷川ら9)は,中等度の胸部外傷40 例(APACHE IIスコア平均17 点)に対してNPPV を施行し,挿管症例と比較した結果,有意に経口摂取開始までの日数が短く(2.1 日vs. 7.3 日),合併症の発生もなく,呼吸管理上遜色ないと報告した.症例には,頭頸部・腹部・骨盤・四肢の外傷を合併する多臓器損傷や多発外傷があ り,胸部単独外傷も含んでいたが,コミュニケーションが容易で,受傷後しばらくして顕性化してくる症状の聴取や観察にも,挿管症例に比べ有利であった. 2002 年,新井10)は胸部外傷に対するNPPV の適応基準を以下のように示した.受傷機転あるいは他の検索などから胸部単独損傷であること,損傷の全体像の把握がある程度終了しており他に重大損傷がないこと,NPPVのための時間が確保できること,中等度以下の呼吸不全であることとした.そして,多発外傷の場合は,他の合併損傷が安定していることが絶対条件であると報告した. 2005 年,Gunduz ら11)はP/F 比300 以下の胸部外傷・フレイルチェスト52 例について,気管挿管群21 例とマスクCPAP 群22 例に分け比較検討した結果,マスクCPAP 群において,死亡率(33%vs. 9%,p=0.001)と肺炎合併率(48%vs. 9%,p<0.01)が有意に低かった. 2010 年,Hernandez ら12)はレベル1 外傷ICU において,胸部外傷のランダム・クリニカル・トライアルを行った.対象は受傷後48 時間以内に酸素療法が開始されP/F 比200 未満が8 時間以上続く50 例である.25 症例ずつを高流量酸素群とNPPV 群とに割り付け,挿管頻度と在院日数を比較したところ,挿管頻度はNPPV 群で有意に低く(40%vs. 12%,p=0.02),在院日数も少なかった(21 日vs. 14,p=0.001) . 2013 年,Duggal らa)は鈍的な胸部外傷における非侵襲的陽圧換気の安全性と効果について,MEDLINE(1946〜2012 年6 月),EMBASE(1980〜2012 年6 月),Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)databases よりシステマティックレビューを行い3 つのRCTと2 つの後ろ向きコホート研究,4 つの症例報告を報告している.その結果,エビデンスは強くないものの,非侵襲的換気(NPPV やCPAP)を早期に開始すれば,気管挿管を防ぎ,合併症とICU 滞在期間を減少させるとした. 3 NPPV の治療方針 呼吸管理の目的は,換気障害の治療,低酸素血症の治療と無気肺の発生・進行予防である(表2).骨折による疼痛のために呼吸運動制限,換気量減少,死腔増大,気 レベルIV レベルIVレベルIII レベルIV レベルII レベルII レベルII レベルIV レベルIV レベルIV レベルIV レベルI レベルIII 表2 胸部外傷におけるNPPV の使用目的 (内固定),低酸素血症の治療と無気肺の発生・進行予防