p.90 抽出テキスト
リニカル・シナリオ-1)の患者である.CPAP の胸腔内圧上昇による肺うっ血の軽減,左室後負荷の軽減,相対的な交感神経緊張の緩和などにより治療効果が得られる. CPAP は肺動脈楔入圧(pulmonary artery wedge pressure:PAWP)が12mmHg 以下の時は減少させるが, 12mmHg 以上のときは心拍出量を増やすとされており,心不全状態に対し有利に働く8).また,CPAP は心不全状態においてheart rate variability を増加させる9).つまり急性肺水腫に対しCPAP は生命維持治療であるとともに治療方法のひとつであるといえる.CPAP は高濃度酸素投与と比べ有意な呼吸数減少,PaO2/FIO2 上昇,血行動態の改善,気管挿管減少をもたらす5, 10〜17).特に頻脈の改善がCPAP で早期に認められることは重要である11).心筋虚血後,気絶心筋の状態になっている心筋の機能回復は呼吸,循環系の機能回復によりもたらされる18).また,呼吸仕事量の増加は心臓への負担を増やす.呼吸仕事量を減少させるのはCPAP の優れた点のひとつである. CPAP は,より早い血管外肺水分量の減少と換気血流比の改善により酸素化能と肺胞換気量の増加をもたらし頻呼吸を改善する.呼吸困難感の軽減も,頻脈改善の理由のひとつである.現在,急性心原性肺水腫による呼吸不全に対してはNPPV(continuous positive airway pressure:CPAP およびbilevel positive airway pressure: bilevel PAP)を第一選択とした呼吸管理をすべきであると推奨されている. 4 bilevel PAP 急性心原性肺水腫に対してbilevel PAP は包括的にCPAP 同様の有効性が認められている14〜17).CPAP とbilevel PAP のどちらがより効果的かと比較した研究では,ひとつはCPAP,bilevel PAP,マスク酸素投与の順に生存退院率が高いとしている13).もうひとつの研究ではCPAP もbilevel PAP も同様な効果を持つとする報告されている19).しかし,生命予後に関しては,メタアナリシスでもbilevel PAP は死亡率を低下させる傾向にあったが症例数の少なさのため,有効性は確認できていない.しかし,CPAP とbilevel PAP との間には有意な差はなかった. 一方でCPAP がbilevel PAP よりも生存退院をさせる率が高く(p=0.029),より有効だとする報告もある13).いずれにせよ,CPAP はbilevel PAP よりも生命予後の点で有効性が明らかに証明されていて,より簡単な設定で,呼吸器との同調性も考慮しなくてよく,簡単に誰でも対応しやすい.CPAP モードを第一選択とすべきである. 5 心筋梗塞の合併 Mehta らはbilevel PAP はCPAP と比べ心筋梗塞の発症が多いと報告した20).この報告ではbilevel PAP 14 例のうち10 例が心筋梗塞に進展したとしているが,14 例中心電図上虚血性変化が13 例に,10 例に胸痛発作がstudy entry 時に認められている.つまりはじめからこの10 例は心筋梗塞だった可能性が高い.その後,同様の報告はなくbilevel PAP が心筋梗塞を引き起こすということは否定的である14〜17).最近の報告ではCPAP とbilevel PAP とで心筋梗塞の発症率に差はなかった21).日本の報告では,心筋梗塞発症の有無に関係なく,低酸素性の急性呼吸不全に対し同様にNPPV は効果的であることが示された22).また,ショックを除いた心筋梗塞に合併する心原性肺水腫による低酸素性急性呼吸不全患者に対し, CPAP は血行動態,酸素化能を有意に早く改善し,気管挿管への移行,ICU 死亡率を減少させ有効な治療方法であることが報告されている10). 6 無効症例 NPPV 無効例となる症例として特に注意すべき状態は, 1NPPV 開始後1 時間でも低酸素血症が改善しない,2肺炎や気管支炎による喀痰の排出ができない,この2 つである.低酸素血症が改善しない状態としては高度の心機能低下(左室駆出率30%以下で腎機能低下など)状態が背景にある場合が多い.また,肺炎を契機として心不全が悪化することはよくみられるが,この場合は喀痰の量と排出が可能かどうかである.はじめから喀痰の排出ができない場合は気管挿管を推奨する.喀痰排出が可能でありNPPV により酸素化能が改善してくる場合でも,経過の途中で喀痰排出ができなくなってくる場合がある.この場合に肺炎の治療経過をよく検討し,まだ治療に時間がかかるようであればPaO2 が維持できていても気管挿管に移行することを推奨する.また,日本の報告でAcute Lung Injury でのNPPV 無効症例の予測因子を示した報告もある23).ここでは,NPPV を1 時間施行時点でAPACHE IIスコア17 以上,呼吸回数25 回以上で気管挿管が必要であった.このほか,pH 値をNPPV 成功の指標として提案する報告もある24). 7 生命予後 2005 年以降,多数のメタアナリシスが行われ,NPPV (特にCPAP モード)が生命予後を改善することが確認された25〜32).特にJAMA 27),Lancet 26),Cochrane Database of Systematic Reviews 25),これら3 つのメタアナリシスは非常に精度の高いものであり,十分に信頼できエ