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p.89 抽出テキスト

1 はじめに

急性心原性肺水腫による呼吸不全は頻度が高く,かつ重症になりやすい病態である.急性肺水腫は肺胞への水分の漏出,肺コンプライアンスの低下,気道抵抗の増加が起こり,呼吸不全を呈してくる1, 2).低酸素血症に対してはpositive end expiratory pressure(PEEP)を用いた人工呼吸が必要となる3).PEEP は平均気道内圧を上昇させ,肺の虚脱箇所への換気を改善,機能的残気量の増加,酸素化能の改善,呼吸仕事量の減少,左室後負荷の減少により血行動態に対し有益な影響を与える4, 5).現在,急性心原性肺水腫による呼吸不全に対してはNPPV(continuous positive airway pressure:CPAP およびbilevel positive airway pressure:bilevel PAP)を第一選択とした呼吸管理をすべきであると推奨されている6, 7).

2 機器

急性心原性肺水腫患者においては,分時換気量の増加,頻呼吸,短い吸気時間などによって最大吸気流速が60L/分以上にもなり,また高度の低酸素血症を生じている.この場合,使用される人工呼吸器は吸入酸素濃度を100%にすることができるもの,フロージェネレーターが呼吸サイクルの始めから終わりまで,目標とするCPAPレベルを維持できるものでなければならない.よって,

目標とする動脈血酸素分圧,PEEP レベルの低下を防ぐためには高濃度酸素,高流量が必要となるので高性能のNPPV 専用人工呼吸器を用いるべきである.

マスクは,鼻マスク,鼻口マスク,トータルフェイスマスク,ヘルメットの4 種類がある.鼻マスクは使わないため,鼻口マスク,トータルフェイスマスクが選ばれるが,どちらを用いても構わない.ただしbilevel PAP を行うときは鼻口マスクが好まれる.トータルフェイスマスクはマスクと顔表面との空間が広いため,時々呼吸器がミストリガーをして吸気でないのにガスを送り込んでしまうことがある.快適さと効果と使用するモードとを考慮し総合的に判断すべきである.ヘルメット型のものも,最近用いられるようになってきている.非常に優れたデバイスであり,特にマスクの装着をいやがる場合,不穏な場合には効果を期待できる.

3 CPAP

心原性肺水腫における水分過剰,心収縮力低下の状態に対しCPAP による人工呼吸を行うと胸腔内圧の増加が静脈還流の減少,左室後負荷の減少により血行動態に対し有益な影響を与える.CPAP の効果が最も期待できるのは,急激な血圧上昇に伴う非虚血性の心原性肺水腫(ク

各論A:急性呼吸不全

心原性肺水腫

5

CQ 5急性心原性肺水腫の人工呼吸管理にCPAP またはbilevel PAP を使用すべきか?

回答:急性心原性肺水腫に対するNPPV の有効性については多数のメタアナリシスが行われ,その有効

性が確認されている.CPAP は酸素療法と比べ有意な呼吸数減少,P/F 比上昇,血行動態の改善,気管挿管減少,死亡率減少をもたらす.特に頻脈の改善が早期に認められることは重要である.bilevel PAP はCPAP 同様の有効性が認められているが,生命予後の改善は証明されていない.CPAP とbilevel PAP とで心筋梗塞の発症率に差はなく,またショックを除いた急性心筋梗塞に合併する急性肺水腫に対しても有効な治療法である.

CQ5 推奨:急性心原性肺水腫に対し,NPPV(特にCPAP)を第一選択とすべきである.【エビデンス

レベルI,推奨度A】