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p.85 抽出テキスト

2 NPPV のエビデンス

急性呼吸不全を呈する間質性肺炎の系統的な検討は現在まであまり行われておらず,急性間質性肺炎症例の検討と,IPF の増悪を主体とする急性呼吸不全症例の検討が少数の報告で行われているに過ぎず,ランダム化比較試験は行われていない.以下に急性呼吸不全を呈する間質性肺炎,およびNPPV に関する論文を概説する.

Katzenstein らはAIP 8 例を検討し生存率12%と報告している3).Olson らは29 例のAIP 症例を検討し,生存率はARDS とほぼ同様の41%と報告し4),Ichikado らは31 例のAIP 症例を検討し生存率32%(10/31)と報告している5).以上のごとくAIP の予後は不良であると報告されているが,NPPV については言及されていない.最近,原因が明らかでないARDS に対して外科的肺生検を行ったところ,AIP に合致するびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage:DAD)所見は40%の症例にしか認められなかったと報告されており6),AIP と類似の臨床像を呈する間質性肺炎の存在が指摘されている.近藤らは,慢性間質性肺炎の既往のない急性経過の間質性肺炎14 例(特発性8 例,膠原病6 例)に対し,高めのCPAP 主体のNPPV を施行し3 ヵ月生存率が50%と,本対象におけるNPPV の有効性を示唆する結果を示している22).

日本から提唱された疾患概念であるIPF の増悪23〜26)を主体とする急性呼吸不全症例は,近年,欧米においても予後不良なことから注目され種々の報告がなされてきている.Stern らの報告では,急性呼吸不全のために人工呼吸管理(mechanical ventilation:MV)を要したIPF 患者23 例を検討し,MV の開始後,肺移植を受けることができた1 例を除き,すべてMV を受けている期間中に死亡(中間生存期間3 日,1 時間〜60 日)したと報告した9). Blivet らは,急性呼吸不全を呈したIPF 15 症例における侵襲的および非侵襲的人工呼吸の有効性を検討し,ICU での死亡は11 例で,ICU から退室した4 例のうち2 例が退室後早期に死亡したと報告した.このうちNPPV は5 例に施行され(2 例は挿管人工呼吸管理に移行),3 例が死亡,NPPV のままで2 例は改善しICU を退室している10). Fumeaux らによるICU で人工呼吸管理を行ったIPF 11例,二次性肺線維症3 例の検討では,11 例にNPPV が施行され全例挿管管理に移行し,ICU 滞在平均7.6 ± 4.6 日で全例死亡している11).Saydain らは,ICU に入室したIPF 38 例を検討し,18 例の人工呼吸管理症例のうち7 例にNPPV を行い6 例が挿管人工呼吸管理に移行したと報告している12).彼らの成績では,ICU 死亡率は45%,病院死亡率は61%で,病院で生存した患者の92%は退院後,2 ヵ月の中間生存期間で死亡している.Al-Hameedらは,IPF の増悪25 例を検討し,3 例がNPPV を施行しているが,25 例中24 例が死亡し,生存1 例も,31 日間入院し,退院30 日後に再入院し死亡している13).これら

5 文献からはIPF の急性呼吸不全症例の予後は極めて不良であり,NPPV の有効性も限られたものであった.近藤らは,急性呼吸不全を呈した間質性肺炎全31 症例における検討では,3 ヵ月での生存率は48%(15/31)で, NPPV 成功群ではNPPV 失敗・挿管群に比し有意に予後が良好(生存率81%vs. 15%,p=0.0002)であったと報告している22).Tomii らは,間質性肺炎の増悪33 例を,前NPPV 期11 例,NPPV 期22 例に分け比較検討し,60 日生存率は前者で27%に対し後者で65%と有意差を認めた(p=0.02)27).Yokoyama らはNPPV 療法を施行したIPFの増悪11 例の成績を検討し90 日生存率は45.5%と比較的良好であったと報告している28).Mollica らは,ICU 管理を要した終末期IPF 34 例を検討し,入院死亡率は挿管人工呼吸管理群100%,NPPV 73%と不良だが,NPPVにより呼吸数は減少し緩和的な効果が示唆された29). Yokoyama らは,NPPV 療法を施行した急速進行性間質性肺炎38 例の成績を検討し,早期NPPV 導入(ハザード比37.04(95%CI 0.003〜0.257)p=0.002),PaO2/FIO2 高値,KL-6 低値,LDH 低値がNPPV 成功の予測因子であると報告した30).Gungor らはICU 管理を要した間質性肺炎120 例(IPF 96 例)を検討した.NPPV は75 例に施行され38 例(50.7%)で成功し,失敗の予測因子はAPACHE II>20(ハザード比2.77(95%CI 1.19〜6.45) p<0.02)と継続的なNPPV 使用(5.12(1.44〜18.19)p< 0.01)であり,NPPV はAPACHE II<20 の重症でない症例がよい適応であろうと報告しているa).2011 年のIPFの国際ガイドラインでは,NPPV が適応となる症例があろうと記載されており15),日本の特発性間質性肺炎 診断と治療の手引きの改訂第2 版ではNPPV を積極的に試みてよいと記載されている1).表1 に間質性肺炎に対するNPPV の報告のまとめを示す.

本ガイドラインでは,比較試験が行われていないため本対象群に対してNPPV を日常的に使用することは推奨できないが,本疾患群が免疫抑制療法の適応となることが多く,挿管人工呼吸管理を行っても人工呼吸器関連肺障害のリスクが高く,極めて予後不良であることから,慎重な観察下での施行は許容できると判断する.また,挿管人工呼吸管理を希望しない症例(do not intubate: DNI)では,NPPV を上限としてもよいと考えられる.

3 NPPV の治療方針

間質性肺炎における呼吸管理には,低酸素血症主体のI型呼吸不全の場合と,呼吸性アシドーシスを伴うII型呼吸不全の場合に大別されるが,滲出期から器質化期の主体は前者であり,不可逆性の線維化に進行すると死腔換気が増え,また呼吸筋疲労を伴うにしたがい後者に移