p.70 抽出テキスト
1 はじめに 国際的なCOPD のガイドラインであるGOLD では, COPD とは「一般的で予防や治療が可能な疾患で,持続的な気流制限を特徴とし,通常進行性で,有害な粒子またはガス(多くはタバコの喫煙)に対する気道や肺の異常な炎症反応と関連する」と定義されている1).一方, COPD の増悪については,労作時呼吸困難,咳嗽,喀痰といった慢性の症状が日常の変動幅を超えて悪化し,管理に変更を要する状態と定義された1).増悪時の症状としては,息切れの増強が主であり,喘鳴および胸部狭窄感,咳・喀痰の増強,痰の色・粘度の変化,発熱,他の非特異的な症状などが認められる.原因として最も多いものは気道感染であるが,約1/3 分は原因不明とされている.呼吸器症状の悪化を引き起こす肺炎,肺塞栓,うっ血性心不全,気胸や胸水などは,共通の臨床像を呈するため鑑別上重要である1, a). 急性呼吸不全におけるNPPV において,COPD の増悪は種々のランダム化比較試験の結果から,NPPV の最もよい適応であることが明らかとなり,GOLD では推奨療法とされている1) .この場合,NPPV を推奨する理由としては,呼吸性アシドーシスの改善(pH を上げ,PaCO2 を低下),呼吸数,呼吸仕事量,呼吸困難感の減少,人工呼吸器関連肺炎などの合併症の低下,入院期間の減少などに加え,挿管を回避し,生存率を有意に改 善することが示されている3〜5).NPPV はすでにCOPD増悪期の治療に不可欠なものといえよう1〜3, a). 2 NPPV のエビデンス COPD の増悪は,NPPV ではじめてランダム化比較試験(randomized control trial:RCT)が行われた病態であり,種々の検討が,ICU,一般病棟,救急室などにおいてなされている.当初の報告では,直ちに挿管が必要でなく,呼吸数の増加,pH<7.35 かつPaCO2>45mmHgの呼吸性アシドーシスを呈するといった基準が用いられていたが,最近ではより軽症例を対象とした検討がなされている4). ICU における報告のメタアナリシスでは,平均pH 7.23の患者群で,NPPV により挿管率は63%(95%confidence interval[CI]±9.4%)から21%(95%CI ±7.7%)と有意に減少し,死亡率についても,NPPV により25% (95%CI ±8.4%)から9%(95%CI ±5.6%)と有意な減少を認めている4).この結果から,1 人の挿管患者を減らすのに必要なNPPV 施行人数(numbers needed to treat: NNT)は2.4 人,1 人の死亡患者を減らすのに必要なNPPV 施行人数は6.3 人となる4). 一般病棟においては,Plant らにより236 例という大規 レベルI各論A:急性呼吸不全 COPD の増悪 1 CQ 1 COPD 増悪による急性呼吸不全の呼吸管理にNPPV を使用すべきか? 回答:急性呼吸不全におけるNPPV において,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の増悪は最も多くの検討がなされている.GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では,NPPV は呼吸性アシドーシスの改善,呼吸数・呼吸仕事量・呼吸困難感の減少,人工呼吸器関連肺炎などの合併症の低下,入院期間の減少などに加え,挿管を回避し生存率を有意に改善する有効な治療として推奨されている.NPPV を有効に行うには,適切な症例を選択し,適切な時期に導入するのに加え,関与する医療スタッフがNPPV に習熟することが不可欠である. CQ1 推奨:COPD 増悪による急性呼吸不全に対し,NPPV を使用すべきである.【エビデンスレベル I,推奨度A】