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p.61 抽出テキスト

析では,NPPV 患者へのケアが医療従事者の感染リスクを有意に高めなかった8).Cheung らの報告でも,NPPV患者をケアした105 名の医療従事者における感染発生は皆無であった9).

2007 年のWHO による急性呼吸器感染症の地域あるいは世界的流行時における感染予防対策に関する勧告においては,NPPV の使用による感染伝播の可能性はあるが議論の残る領域であるとされている10).

したがって,現時点の結論としては,病原体が既知であれ未知であれ,また感染経路のいかんを問わず,院内流行を回避する目的で一律にNPPV 療法の適用を強く妨げるだけの傍証は不足していると言わざるを得ない.さらに,急性呼吸不全において,NPPV 療法の適用により挿管が回避され,患者生命予後が改善する可能性にも配慮し9),個々の患者および現場においてその適用を慎重に考慮することが肝要である.なお,患者–患者間あるいは患者–医療従事者間の院内感染伝播予防の根幹は,標準予防策に加え,病原体の感染経路別予防策の確実な適用である. b.推奨文2に対して

手指衛生を含む標準予防策の適用は,すべての院内感染予防に共通した基本的かつ重要な予防策である.すべてのNPPV 患者への接触時には,手洗い(手指衛生),手袋,ガウン,マスク・ゴーグルを正しく適用する.特に人の手を媒介した病原菌の水平伝播を確実な手指衛生の履行により回避することは,医療従事者の基本常識である11, 12).なお,NPPV のケアは曝露の予測が困難で感染リスクが高い医療行為であるため,標準予防策に加えて感染経路別予防策をとるのがよい12). c.推奨文3に対して

NPPV 患者に対する感染予防策は,具体的には確定診断あるいは推定の病原菌伝播が,空気感染経路によるのか(結核菌,水痘・帯状疱疹ウイルス,麻疹ウイルスなど),飛沫感染経路によるのか(インフルエンザウイルス, RS ウイルスなど),接触感染経路によるのか(細菌など)を評価し,それぞれに応じた感染予防策(個人用防御具の適用,病室環境の整備)をとれればよい11〜15).しかし,現実には病原体が不明あるいは未同定であったり,曝露の予測が困難なことも多く,最低限,飛沫感染経路予防策を適用しておくのがよい.予防策の詳細については,別途文献に詳細な記載があるため,本書では割愛したい11〜15). NPPV 患者の療養環境に,必要とされる個人防御具が適切に配備される必要がある. d.推奨文4に対して

NPPV に使用するマスクやヘッドギア,呼吸回路はセミクリティカル器材に分類される.したがって,再利用

する場合は,高水準もしくは滅菌を行うが13〜15),パスツーリゼーション(70°Cを超える熱水による30 分間処理)や熱水消毒(80°C,10 分間)も可能である16, 17).基本的には,個々のメーカーの推奨に従う. e.推奨文5に対して

NPPV の回路交換の頻度に関して検討した報告はない.気管挿管下の人工呼吸回路と肺炎の関連性に関しては,以下の推奨がある.現状ではこれらをNPPV の回路交換時の参考とする.

1回路の交換は人工呼吸器関連肺炎(VAP)の危険因子

であるとされ,定期的に交換する場合としない場合とでVAP 発生率に差はないため,定期的にしなくてもよい18〜20). 2回路内の結露の存在は特にグラム陰性桿菌群など細

菌増殖の温床となりうるため21, 22),発見時あるいは定期的に無菌的操作により取り除く. 3ネブライザー液も細菌汚染の原因となるため,VAP

の予防的観点からは使用しないほうがよい23〜25).このような閉鎖回路管理の推奨が,NPPV 回路に関しても外挿可能かどうかは不明である.

文献1)Hui DS, Hall SD, Chan MTV, et al: Noninvasive positive-pressure ventilation: an experimental model to assess air and particle dispersion. Chest 2006; 130: 730- 740. 2)Hui DS, Benny K, Ng SS, et al: Exhaled air dispersion distances during noninvasive ventilation via different respironics face masks. Chest 2009; 136: 998-1005. 3)Hui DS, Chow BK, Chu LC, et al: Exhaled air and aerosolized droplet dispersion during application of a jet nebulizer. Chest 2009; 135: 648-654. 4)Hui DS, Hall SD, Chan MT, et al: Exhaled air dispersion during oxygen delivery via a simple oxygen mask. Chest 2007; 132: 540-546. 5)McCracken J: Should noninvasive ventilation be considered a high-risk procedure during an epidemic? CMAJ 2009; 181; 663-664. 6)Centers for Disease Control and Prevention: Interim domestic guidance on the use of respirators to prevent transmission of SARS. Accessed May 6, 2003. Available from http://www.cdc.gov/ncidod/sars/respirators.htm 7)Yu IT, Xie ZH, Tsoi KK, et al: Why did outbreaks of severe acute respiratory syndrome occur in some hospital wards but not in others? Clin Infect Dis 2007; 44: 1017-1025. 8)Fowler RA, Guest CB, Lapinsky SE, et al: Transmission of severe acute respiratory syndrome during intubation and mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med