p.56 抽出テキスト
手順に従うことになる. 大規模災害の発生時,仮設あるいは臨時医療施設内,後方への患者搬送においてNPPV 実施する患者について,共通して行うべき具体的対処は表4 のごとくである. b.新たに実施する場合 NPPV は装着が容易ではあるが,実施の際には侵襲的人工呼吸管理と同等か,それ以上の知識と経験が必要である.特に急性呼吸不全患者の管理に用いる場合には, NPPV の中断が即時に患者の生命維持に支障を生じる例も含まれるため,ICU と同等の注意義務が生じる. c.NPPV と神経筋疾患による呼吸不全患者 NPPV は平常時から神経筋疾患の慢性期在宅医療における,有力な治療手段として用いられる現状から,避難者のなかには,夜間のみの補助換気により健康を維持している慢性換気不全患者や,IPPV の適応でありながらNPPV を継続している終日換気補助の適応者まで含まれる可能性がある.災害医療の担当者は常にこのことを認識し,優先度を判断しなければならない. 在宅NPPV 療法は原則として,マスクを含む機器の操作や喀痰の排除など,最小限の自己管理が可能な例が適応だが,緩徐に進行する病態では,発声が困難となる気管切開を可能な限り回避する立場から,周囲の支援を前提として在宅状態を継続しているNPPV 施行例が少なくない.このような例では,機器作動に必要な条件に加えて介護スタッフや家族の支援が受けられるかどうかが,発災後の継続可否を左右する.被災地では,継続的な人的支援が困難な場合が多いことから,自己管理が困難な例は広域搬送や近隣医療機関への避難のための入院を優先させるべきであろう. d.東日本大震災の経験 東日本大震災では,慢性呼吸不全患者をはじめ,睡眠呼吸障害,慢性腎不全,排泄機能障害,消化・栄養機能障害など高度な医療機器・材料を用いる在宅医療の対象者が重大な影響を受けた.その詳細を数値によって示すことは困難であるが,NPPV も慢性呼吸不全患者におけ 被害と避難施設の状況を 確認し,搬送待機支援先に連絡し,後方施設へ緊急搬送 呼吸困難や意識変化なし 全身(意識,表情,呼吸状態)の確認※パルスオキシメータや血圧計を利用. 発 災 NPPV 継続呼吸や意識の異常 蘇生用バッグで 用手的換気* NPPV 機器は作動中 停電の有無,NPPV・酸素供給機器の動作確認 停電情報ありNPPV 機器が停止中 蘇生用バッグで用手的換気継続* *自発呼吸が可能な病態 ならば必要ではない. *酸素が必要な病態ならば 緊急用ボンベを併用. 図1 医療機関以外における対応の流れの例 発災直後には,患者の呼吸状態や機器の作動状態が正常か否かを確認することが重要だが,判断が困難な場合はまず用手的な方法で患者の換気を確保したうえで,機器の確認作業を行うことが重要である.その前提として,短時間の自発的な換気が可能か否かを事前に判断したうえで,取るべき行動を選択できるよう,平常時から「緊急時処方(行動の指示)」を得ておく必要がある.