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p.32 抽出テキスト

本療法を開始する病態であるが,対象疾患患者の睡眠時呼吸障害と密接に関係する1).すなわち睡眠中のREM期の無呼吸によらない低換気が,基礎にある慢性呼吸不全の進行をさらに助長するという理論による4).また,それは酸素吸入ではなく夜間のNPPV 治療によって慢性呼吸不全のそれ以上の進行を抑える5).

すでにHOT(長期在宅酸素療法)を行っているCO2 蓄積のあるCOPD 患者におけるHOT に加えた夜間NPPV導入の効果について,最近のオーストラリアからの報告では,生活の質としての活動度などの低下はあるものの生命予後を延長させることが示されている6).

また,80 歳未満の慢性高二酸化炭素血症を伴う比較的重症度の高いCOPD に対するprospective な予後の観察研究から,在宅NPPV 症例(99 例)は長期NPPV 非施行症例(41 例)と比べて,重症例ほど[(BE>8.9mmol/L), low pH(<7.41),FEV1(<27.5%)]1 年生存率(87.7%vs. 56.7%),2 年生存率(71.8%vs. 42%)と有意に生存に対するNPPV の効果を認めている7).

したがって,各疾患によってその導入至適時期の目安となるPaCO2 のレベルは少しずつ異なり,各論にガイドラインとして記載されているが,PaCO2 50〜60Torr 前後が基準となる.ただしpH は慢性呼吸不全であるため,保たれていることが多く,重炭酸イオンは代償のため増加していることが前提条件となる. b.導入時期

慢性呼吸器疾患では,基礎疾患が徐々に進行し換気補助が必要となることが多い.高二酸化炭素血症を呈する患者で,睡眠時低換気に由来する早朝の頭痛,傾眠,寝苦しさ,呼吸困難感の増強などの自覚症状や,浮腫などの右心不全の徴候がみられ,在宅酸素療法中にもかかわらず増悪を繰り返す症例はNPPV の導入を検討する必要がある.長期在宅酸素療法患者では,定期的に終夜SpO2をモニターして睡眠時の酸素飽和度の低下がないか確認し,必要があれば睡眠時低換気の有無を検討するために睡眠ポリグラフを行う. COPD で増悪後に引き続いて導入した31 例について

検討した成績8)では,増悪後の平均生存期間中央値は

28.6 ヵ月であり,1 年生存率68%,2 年生存率55%で

あった.これとほぼ同じ背景を持つ対象群16 例で安定期に長期NPPV を導入した患者群と比較したところ,増悪後に導入された症例においても,PaCO2 からみた治療反応性,施行時間,換気圧などに有意差はなく,治療に対するアドヒアランスなどが良好であったとしている.なお,慢性期での導入は,即時的な効果が乏しいためその効果を患者に理解してもらいにくく,導入後アドヒアランスの低下につながっている.したがって,急性期に本法の効果を知った後引き続き適応があれば導入したほうがアドヒアランスを高められる可能性がある.

2 患者・家族に対する説明・教育

治療を始める前に,現在の病状,睡眠時の低換気,換気補助の必要性,期待される効果,副作用(表2), NPPV 不適応時の対応を医師から患者と家族に説明する.これは治療に対する不安感を取り除き,治療への積極的な意識を高めるのに必須である.

COPD に対しては,本療法により従来QOL の改善などが期待され,それを示す研究報告もなされている.しかし一方,呼吸機能・ガス交換・睡眠に関する改善は認められなかった9)とする報告もあり,本法の効果の評価には違いがあり4, 5, 10, 11),そのことを理解してもらったうえで開始する必要がある.なお,COPD で最近になりQOL の改善のみならずいくつかの文献で予後の延長も証明されてきている7, 8, 12, 13).

神経筋疾患や肺結核後遺症などでは,適応病態に至った際には医学的には行うべき最良の方法として提示すべきである.

特に神経筋疾患では,1990 年代すでにDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)やALS(筋萎縮性側索硬化症)に対していくつかの非ランダム化比較試験14, 15)があり,それらによりNPPV の生命予後改善効果が明らかになり,倫理的にそれ以上の臨床研究が行えない状況となっている.それは肺結核後遺症による慢性呼吸不全に対するNPPV 療法でも同様である.

3 用いられる機器

増悪時に使用される機器とは異なり,在宅で長期に使用されるため,よりコンパクトで操作性が容易かつ停電などの際にもバッテリー駆動可能な機種が選択される.最近では換気量設定方式に進歩がみられ,一回換気量,あるいは分時換気量(肺胞換気量)をあらかじめ設定し,睡眠中の一過性の低換気の際にも一定の換気量を維持で

表1 慢性在宅NPPV 導入対象疾患の内訳(2,753 人) COPD 26%肺結核後遺症23%神経筋疾患18%後側彎症5%肺胞低換気症候群3%肺高血圧症3%肺線維症,間質性肺炎2%その他20% (日本呼吸器学会認定施設251,一般病院103,臨床内科医会からの抽出施設21,計375 施設からのアンケート調査の結果.在宅呼吸ケア白書,2010 から)