p.29 抽出テキスト
4 急性期導入の留意点 迅速に開始できるNPPV は救急で特に有用である.米国132 の救急部門調査では76%で常時NPPV 使用可能であり,大半の患者が救急来院10〜20 分以内にNPPV を開始されている3).このようなすぐに開始できる準備態勢が重要であるが,NPPV で改善しない患者に対して侵襲的治療を直ちに行える体制も不可欠である.また, NPPV 専用の非侵襲的人工呼吸器を複数備え,多種類のマスクを常備して個々の患者にフィットするのもの選択できることが望ましい.NPPV には侵襲的人工呼吸のようなテストバッグはないため,いきなりNPPV を努力呼吸中の患者に装着するよりは,まず医師みずからNPPVの初期導入設定を試すとよい.いったん圧のかかっていないスタンバイの状態でマスクをあてがってから,陽圧を開始するほうが患者の拒否感を招きにくい.導入直後は呼気介助法を併用し,NPPV と患者の呼吸との同期性を確保する.患者によく話しかけを行いNPPV との反応性をみて,さらに評価していく姿勢が必要である. 5 患者モニタリング 患者の臨床評価には,NPPV の快適度,意識レベル,胸郭の動き,呼吸補助筋の動き,自発呼吸と人工呼吸器との同調性,呼吸数,心拍数をモニターする.NPPV を実施中の患者では,定期的に治療に対する反応を確認し, NPPV 治療器の設定調整を行う.患者の臨床経過によって動脈血ガス分析が必要かどうかを判断し,多くの場合, NPPV を開始して30 分〜1 時間後に採血し,初期の血液ガスにあまり改善がなかった場合には,治療条件を変更し2〜4 時間後に動脈血ガスを測定する.患者の自発呼吸との同期が不良と考えられる場合は,リーク補正に強いNPPV 専用機への機種変更や,患者の顔面形状にフィットしてリークが少なく圧迫の少ないマスク(鼻口マスク,トータルフェイスマスク,ヘルメットなどのインターフェイスも含めて)への変更,トリガー感度の変更などが必要である.それでもどうしても同調しないときは最小吸気時間の延長,最大吸気時間の短縮などの修正によって,なるべく自発呼吸のリズムに合わせるようにする.これらの条件変更や細かい修正にもかかわらずPaCO2 やpHに改善がみられないときは,NPPV を中止して侵襲的人工呼吸を検討する必要がある.呼吸状態の改善は,血液ガス所見だけでなく,呼吸困難感の軽減,吸気補助筋(胸鎖乳突筋など)の活動性の低下が有用な指標となる.特に奇異性呼吸が消失し,呼吸努力とNPPV の同期性が保たれ,胸郭がスムーズに拡張していることは重要な指標である.さらにNPPV 中に咳や痰が多く出てくる場合は,積極的に肺理学療法を活用する.喀痰喀出困難が強い場合は,侵襲的人工呼吸を念頭に入れながら,NPPV の継続の可否を慎重に判断する. NPPV を開始して少なくとも24 時間は酸素飽和度を連続モニターし,酸素飽和度85〜90%に保つようFIO2,酸素投与量を調整する.また,NPPV は服薬・理学療法・摂食の間は中断することができる.最初の数時間にNPPV による改善傾向が得られた場合,NPPV 開始後の24 時間,または改善が得られるまでできるだけ長時間NPPV を継続する.慢性II型呼吸不全急性悪化のためにNPPV を実施した患者は,いったん安定したら日中徐々に外す時間を増やし,最終的に夜間在宅で継続すべきかどうかを,室内気自発呼吸下でのスパイロメトリーと動脈血ガス分析などで評価することが大切である. 6 急性期NPPV の初期導入設定(例) 初期導入設定圧は吸気圧8cmH2O,呼気圧4cmH2O を基本とし,それぞれの圧を増減して,患者が楽に呼吸できる至適圧を,バイタルサインおよび呼吸状態を評価しながら決定する(表2).S/T モードが多く使われるが,急性期ではNPPV 装置が患者の努力呼吸を感知しなかった場合のバックアップの呼吸数設定に配慮を要する.バックアップ呼吸数は患者の努力呼吸数より10〜20%から引いた値にすると患者の呼吸とNPPV が合いやすい.呼吸状態改善により努力呼吸数は減少していくので, 表1 急性呼吸不全におけるNPPV のエビデンスレベル1ランダム化比較試験推奨COPD 急性増悪COPD の抜管およびウィーニング心原性肺水腫免疫不全患者レベル2コホート研究推奨挿管拒否緩和手段としての終末期使用COPD,心不全の抜管失敗予防COPD の市中肺炎術後呼吸不全の治療と予防喘息における急性増悪予防要注意重症市中肺炎抜管失敗予防レベル3症例比較研究推奨神経筋疾患,亀背側彎症上気道の部分的閉塞胸部外傷喘息の急性呼吸不全要注意SARSレベル4症例報告推奨75 歳以上の高齢者囊胞性線維症肥満低換気要注意IPF