p.28 抽出テキスト
1 はじめに NPPV は気管挿管と比較して早期から用いることができ,気管挿管を回避し,それに伴う死亡や肺炎といった疾病を防ぐ可能性がある.また,NPPV では間欠的な換気補助が可能であり,段階的なウィーニングや,意識が保たれている場合には,通常の食事,飲水,会話をすることができる.さらにネブライザー投薬や理学療法を継続しながら行うことや,排痰,喀痰吸引,口腔ケアなどを行うためにいったん休止することも可能である.したがって,急性呼吸不全患者を入院加療する施設では,できる限り24 時間NPPV を行える体制を整え,NPPV を施行するために熟練したスタッフが治療の適切な換気モード・条件設定・インターフェイスを用いて,モニター監視下のもとに施行できるようにすべきである.早期に開始できる点から習熟した施設では禁忌でなければ,まずNPPV を試みる戦略も成り立つが,改善が得られない患者は速やかに気管挿管に切り換えられる体制がなければならない. 2 急性期導入の適応 急性II型呼吸不全は,1呼吸仕事量の増大,2換気能力の低下,3呼吸中枢からの呼吸刺激の低下により起こる.COPD の増悪を例にとると,感染,種々のストレスなどの増悪因子により痰の過分泌,気道の浮腫,収縮などが起こると,患者の呼吸仕事量が増大する.また,肺の過膨張が増悪するため横隔膜は著しく平低化し,吸気筋の能力を果たせなくなり,呼吸は吸気補助筋の活動に依存する.胸郭も拡大するため,過大な努力呼吸が必要となる.酸素療法や薬物療法が有効でない場合は,急性換気不全が進行し生命の危険が生じるので,換気補助が必要である.急性I型呼吸不全は,換気は保たれた状態で肺の酸素化が低下した状態であるが,PEEP やCPAPなどの陽圧呼吸を行うことで無気肺の改善,防止,換気血流比の改善が得られ酸素化能の改善に至る. 急性呼吸不全に対するNPPV は,これらの状況を踏まえてできるだけ早期に始めて呼吸不全の更なる悪化を防 止するのが重要な役割であるが,あまりに早過ぎると不必要な患者に苦痛のみを与える結果となる.NPPV を考慮してよい基準としては,呼吸困難の増強と呼吸仕事量の増加(頻呼吸もしくは呼吸補助筋の緊張)を認める場合で,呼吸数の基準としては閉塞性障害で>24,拘束性障害で>30,血液ガスの基準としてII型呼吸不全でPaCO2>45Torr,pH<7.35,I型呼吸不全でPaO2/FIO2< 200 などがあげられる1). 急性呼吸不全に対するNPPV のエビデンスレベルが高い疾患は,COPD の増悪,急性心原性肺水腫,免疫不全例における呼吸不全,人工呼吸療法中のCOPD 症例の抜管およびウィーニングである.挿管拒否患者や終末期の呼吸不全,COPD の市中肺炎,術後呼吸不全などについても有効性が確認されつつあるが,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や喘息の急性呼吸不全については,いまだ有効性を示すエビデンスは十分でない(表1)1). 3 急性期導入の禁忌 NPPV を導入するにあたっては,その禁忌を把握しておくことが必須である.NPPV は基本的に自発呼吸下でマスクを用いる治療であり,NPPV の絶対的禁忌は自発呼吸停止とマスク装着不能状態である.挿管拒否などの状況によっては実施する場合もあるが,できれば避けたい相対的禁忌としては呼吸以外のバイタルサインが不安定な状態(ショック,コントロールできない心臓虚血や不整脈,大量の上部消化管出血など),興奮・非協力的状態,気道確保不能,嚥下障害,通常の管理では対処できない大量の気道分泌,多臓器不全,直近の上気道や上部消化管手術などがある1).意識障害が高度な場合は一般的には適応外であるが,COPD に伴うII型呼吸不全, CO2 ナルコーシスでは成功率が高く使用可能である2).また,気胸があってもNPPV を効果的に用いることはできるが,気胸を伴った患者の多くは,NPPV を始める前に胸腔ドレーンの挿入が必要となる.総 論 急性呼吸不全におけるNPPV の導入方法 4