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p.138 抽出テキスト

CSR をターゲットにしてCSR の合併のみを理由にこれらの治療を考慮すべきとまではいえないが,いずれもCHF治療としてのエビデンスが確立されており,CHF 治療として必要性や可能性がある症例ではCSR に対する特異的治療の前に開始すべきである. b.CSR に対する治療

CSR に対する治療として,呼吸中枢刺激作用と強心作用のあるテオフィリンやPaCO2 レベルを高めるための二酸化炭素吸入やデッドスペースの付加などが試されたが14〜16),不整脈やPaCO2 レベルの上昇による交感神経活性の亢進などが懸念され,現在のところ実用に至っていない17).アセタゾラミドはおそらく実際のPaCO2 レベルと無呼吸閾値の差を大きくすることでCSR を抑制する.男性CHF 患者におけるランダム化クロスオーバー試験ではAHI を38%低下させた18).しかしながら6 日間と短期間での結果であり,長期の効果や心機能への影響,副作用の発生などを考慮した検討が必要である.さらに最近では,経静脈的横隔神経電気刺激によってAHI が減少したという報告がなされているが,こちらも長期的な安全性や心機能への影響については検証されていない19, 20).

酸素吸入療法に関しては,短期間のランダム化試験で約50%のAHI の低下を認めると報告されている21〜23).また,夜間の尿中ノルエピネフリン排泄の軽減24),最大酸素摂取量,換気効率の改善効果などもあるとされている21).日本からも酸素療法付加群と通常治療群を比較したランダム化試験の結果で3 ヵ月および13 ヵ月の酸素吸入療法の効果が報告されているが,身体活動能力質問票による活動能力の改善を認めたのみで,左室駆出率(LVEF)の改善や心臓死やCHF の増悪を複合エンドポイントにした心イベント回避に対する効果は認められなかった25, 26).したがって,酸素吸入療法にて直接的に心機能を改善するというエビデンスはない.しかしながら,簡便で忍容性も高く,良好なアドヒアランスが期待できるため,他の治療が困難である場合は導入を考慮してもよいと考えられる.

前述のようにCSR はCHF に伴う肺うっ血などに起因するため,心臓前負荷を軽減し血行動態を改善しうる持続気道陽圧(CPAP)がCSR を合併するCHF の治療として検討されてきた.CPAP によってCSR が抑制される理由は明らかではないが,前述の心負荷の軽減に加え,気道への陽圧負荷によるPaCO2 レベルの上昇などによると考えられている.実際にCSR 自体の改善が報告されている一方で,CPAP のCSR 改善効果に対して否定的な報告もある3, 27).これらを比べると,CPAP の圧レベルを1 週間程度かけて徐々に上げていき10cmH2O 前後まで上昇させた場合ではCSR の抑制に対し効果的なようである3, 27).この方法でCPAP を使用した場合にはPaCO2 レベルを上昇させ,交感神経活性を低下し3, 27),ランダム化試験に

て3 ヵ月間のCPAP 治療でLVEF の増加をきたすと報告されている28).また,単施設における小規模のランダム化試験では,CHF 患者でCSR を合併しない場合,CPAPはLVEF,死亡および心移植を複合エンドポイントとした心イベントの抑制のいずれに対しても効果はなかったが,CSR を合併した場合,CPAP によって3 ヵ月後のLVEF は改善し,中央値2.2 年間での心イベントの発生が低下する傾向がみられた(p=0.059)29).特にCPAP コンプライアンスが保たれた患者に限った解析では,有意に心イベントの発生を低下させた(p=0.017)29).しかしながら,この結果はあくまで単施設の少数例で行われたランダム化試験のサブグループにおける結果であったため,この効果を証明するために多施設の大規模ランダム化試験であるCanadian Continuous Positive Airway Pressure for Treatment of Central Sleep Apnea in Heart Failure(CANPAP)試験が行われた30).この試験ではCSR を合併する258 例のCHF 患者がエントリーされ,対照群130 例,CPAP 治療群128 例における死亡および心移植の複合イベント回避率が比較されたが,2 年間の平均観察期間で両群間のイベント回避率に有意な差を認めなかった(図2).ランダム化後3 ヵ月での睡眠ポリグラフ検査でCPAP 治療群のCPAP 使用下での平均AHI は約20 といまだ高いためより詳細な検討が追加された.それまでの報告でCPAP によってCSR の改善が不十分な症例が存在することが知られていたため2),CPAP 治療群を3 ヵ月目のCPAP 下でのAHI<15 と≧15 の2 つのサブグループに分けて解析をしたところ,AHI<15 の群では対照群と比較して有意にイベント回避率が良好であることが示された(図3)31).これらの結果をまとめると, CPAP 治療はCSR を合併したすべてのCHF 患者において推奨される治療ではないが,CSR がAHI<15 に抑制される場合は治療継続するべきと考えられる.

以上よりCSR をより十分に抑制しうる治療法が重要と考えられ,CPAP よりCSR の抑制効果が大きいと報告されている2 つのNPPV 療法の効果が検証されている.そのひとつは二層性気道陽圧(bilevel PAP)であり,バックアップ換気を付加しないS モードbilevel PAP 装置を使用したランダム化試験で,CSR を有意に抑制しLVEF の改善も有意であった32).しかしながら,理論上S モードでは中枢性無呼吸には無効であり,CSR の抑制効果に関して議論の余地がある.S/T モードでバックアップ換気を付加できる装置によるCSR の抑制とLVEF の改善効果が,日本からの非ランダム化試験の結果にて報告されている33).さらにはCPAP でAHI 低下が不十分(AHI≧ 15)であった症例(CPAP non-responder)に対してS/Tモードbilevel PAP を導入することでAHI が十分に低下し,6 ヵ月間の継続使用でLVEF や血中BNP 濃度の改善