p.136 抽出テキスト
慢性心不全(CHF)はあらゆる心疾患において最終転帰となりうる共通の病態であり,近年,日本でも国民の高齢化や,急性心筋梗塞など致死率の高い心疾患に対する治療の進歩に伴う生存率の向上と関連して有病率は非常に高くなっている.CHF に対する治療も目覚ましい進歩を遂げているもののその予後はいまだに不良である.したがって,CHF を悪化せしめる病態および疾患を同定し,それらに対する介入によってCHF 自体の改善も期待できるような新たな治療を見出すことが重要と考えられている. CHF ではチェーン・ストークス呼吸(CSR)を高頻度に合併し,CSR を合併したCHF の予後は不良であることが数多く報告されている1).さらには,CHF に合併したCSR に対する治療により,短期的な心機能の改善や生活の質の改善が報告されており2, 3),最近では,CSR の改善を介したCHF そのものへの治療のひとつとして臨床の現場でも広く普及してきている.一般的にCSR は中枢性睡眠時無呼吸低呼吸と一回換気 量が漸増漸減する過呼吸のサイクルを繰り返す周期性異常呼吸であり,同様にCHF 患者で高頻度に合併する中枢性睡眠時無呼吸のほとんどがCSR のパターンを呈しているため,これまでの研究ではCSR と中枢性睡眠時無呼吸を明確に区別しているものは少ない.本項でも特に断りのない限りCSR と中枢性睡眠時無呼吸を同義に扱うものとする. 1 疫学 CHF におけるCSR の合併は,CSR を睡眠1 時間あたりの無呼吸ないし低呼吸の頻度を表す無呼吸低呼吸指数(AHI)≧15 でかつ無呼吸および低呼吸イベントの>50%が中枢性であると定義した研究の結果から21〜37%と報告されている4, 5). CHF においてCSR は男性で2〜3 倍多いということが 各論B:慢性呼吸不全 慢性心不全におけるチェーン・ストークス呼吸 3 CQ 18慢性心不全患者のチェーン・ストークス呼吸に対してNPPV を行うべきか?また,どの機種を選択すべきか? 回答:慢性心不全(chronic heart failure:CHF)では,チェーン・ストーク呼吸(Cheyne-Stokes respiration:CSR)を合併し,そのようなCHF 患者の予後は不良であることが知られている.CSR患者を対象としたランダム化比較試験でのNPPV による死亡率改善は示されていないが,CSR を抑制する治療により短期的な心機能の改善が得られることが知られている.治療としては,CSR の原因がCHF そのものであるため,CHF 治療の適正化をまず行う必要がある.次に,CSR をターゲットとしたCHF 治療としてまずCPAP を考慮するが,無呼吸低呼吸指数(AHI)の抑制効果が十分に得られない場合,または忍容性が悪い場合は,bilevel PAP やASV(adaptive servo ventilation)への切り替えを行う.陽圧換気の使用が困難な場合では,酸素吸入療法を検討する. CQ18 推奨: 1慢性心不全患者のCSR に対しては,適応があればまずCPAP を行う.【エビデンスレベルI,推奨 度B】2CPAP の治療効果が不十分であれば,ASV へ切り替える.【エビデンスレベルII,推奨度B】3CPAP の治療効果が不十分であれば,bilevel PAP へ切り替える.【エビデンスレベルIII,推奨度C1】4陽圧換気の使用が困難であれば,酸素吸入療法を検討する.【エビデンスレベルII,推奨度C1】