p.132 抽出テキスト
1 在宅NPPV の現状 近年,高二酸化炭素血症を伴う患者に対する換気補助療法として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が普及しつつある1〜4).これまでは,II型呼吸不全患者の低酸素血症に対する治療は,酸素療法を中心に行われてきたが,肺胞低換気を認める患者には,酸素療法だけではなく,何らかの換気補助療法の必要性が指摘されていた.しかし, NPPV が普及するまでは,換気補助療法の選択肢としては気管切開下陽圧換気療法(TPPV)が中心であったため,在宅症例数はかなり限られていた.しかし,NPPV の普及とともに,在宅NPPV 症例は加速度的に増加傾向にある(図1).全国調査では,在宅NPPV 症例の約30%がCOPD 症例である(総論5「慢性呼吸不全におけるNPPVの導入方法」の表1 参照)4). 2 メカニズム COPD 患者では肺の過膨張に伴う一回換気量の制限,横隔膜平低化に伴う収縮効率の低下,内因性PEEP に伴う呼吸仕事量増大などが原因で呼吸筋に負担がかかり,呼吸筋疲労・換気不全をきたすと考えられている.換気補助により疲労した呼吸筋の負担を軽減し,呼吸筋の休息効果や呼吸調節系のリセッティングの可能性が示唆されている5).呼吸筋休息が呼吸筋の回復につながり, NPPV 時のみならず,日中の肺機能・血液ガス所見の改善につながると考えられている. 3 有効性 慢性安定期のNPPV 療法に関しては,小規模な検討でその有効性が示唆されていた6〜10) .長期酸素療法単独と長期酸素療法とNPPV の併用とを比較すると,NPPV を加えることで,二酸化炭素の蓄積に対して効果があり,呼吸困難感が改善すると報告されており7, 9) ,最近になり生存率が改善されるとの報告もある11, 12) .さらにNPPV がリハビリテーション効果を維持するとの報告があり13),呼吸リハビリテーションにNPPV を併用することで,QOL,呼吸機能,呼吸困難や運動耐容能改善などの効果が期待できる. また,COPD に合併する睡眠時無呼吸症候群や低換気による睡眠呼吸障害の合併(REM 睡眠に伴う低換気)がよく知られており,無呼吸・低換気に伴い酸素飽和度の低下が認められる.このような,夜間の無呼吸・低換気に伴う低酸素血症は夜間の肺高血圧も招く.これらの睡眠呼吸障害(睡眠の質も含めて)がNPPV で改善するという報告もある9, 14) .再入院の減少や増悪の頻 レベルIII レベルIII レベルII レベルIII 各論B:慢性呼吸不全 COPD(慢性期) 2 CQ 17 COPD による慢性呼吸不全に対し,長期NPPV を行うべきか? 回答:COPD に伴う慢性II型呼吸不全に対する長期NPPV により,生存率の改善,呼吸筋の休息,呼 吸調節系のリセッティングの効果が示唆されている.また,COPD に伴う睡眠呼吸障害がNPPV で改善するという報告もあり,健康関連QOL の改善や再入院・増悪頻度の減少につながると考えられている.少数のランダム化比較試験とコホート研究によってこれらの有効性が示唆されているものの,現状ではNPPV の有用性が確立されているとは言い難い.NPPV の導入にあたっては,包括的内科治療を行ったうえで必要性を判断することが望ましく,また導入3〜4 ヵ月後に血液ガス検査・睡眠呼吸状態・QOL・NPPV のアドヒアランス評価を行い,継続の必要性を評価する必要がある. CQ17 推奨:適応のあるCOPD 症例では,NPPV は試みてよい.【エビデンスレベルI,推奨度C1】