p.121 抽出テキスト
2 推奨内容 a.適用病態/疾患 小児の急性ウイルス性下気道炎・肺炎の挿管回避,および短期間の症状緩和やバイタルサイン安定を目的としてNPPV の適用を推奨する. 小児の急性喘息に対して,短期間の喘息症状改善やバイタルサイン安定を目的としてNPPV の適用を考慮してもよい. 上記以外の病態における有用性は確立されていないが,個々の臨床判断による使用が可能である. b.使用モード 使用モードはbilevel positive airway pressure(bilevel PAP)を基本とし,IPAP 10cmH2O,EPAP 5cmH2O を初期設定の目安にしてよい.病態により,より高い補助圧の適用が考慮可能である. c.効果判定 NPPV の初期効果は,遅くとも開始1 時間後に,臨床所見,バイタルサインおよび血液ガス分析値を用いて総合的に判定するほうがよい. 3 推奨の説明 a.小児ウイルス性肺炎・下気道炎 2008 年Yanez らは,チリと米国の2 つの小児集中治療室(PICU)において,ウイルス性(最頻の病因はRS ウイルス)肺炎・下気道炎患者50 名を,標準治療(=酸素療法)と,NPPV とにランダム化割り付けし,予後を評価するRCT を行った1).NPPV 群において,1 時間後の呼吸数,6 時間後の心拍数が有意に低下し,挿管率が有意に低かった(28%vs. 60%).乳児の重症細気管支炎症例に関しては,NPPV の適用により挿管率,人工呼吸器関連肺炎発生率,あるいは酸素療法の必要期間がいずれも減少したとの後方視的検討も存在する2).以上より,病態の早期改善が見込めるウイルス性の急性呼吸不全では, NPPV を適用することで重症化を防ぎうる可能性が示唆される. b.小児の喘息 2004 年Thill らは,2 ヵ月〜14 歳の下気道閉塞病変(喘息)患者を対象に,NPPV の短期的効果を評価するクロスオーバー研究を行った3).NPPV 2 時間後に,臨床的喘息スコア(表2)や呼吸数の有意な改善を認めた.これを受けて2012 年Basnet らは,1〜18 歳の喘息患者を,標準ケアとNPPV+標準ケア群に分類し,NPPV による臨床症状の改善効果を24 時間まで観察評価した4).NPPV適用により臨床的喘息スコア(表3)の有意な改善および酸素需要量の改善を認めた.β 刺激薬やステロイドなどの標準的な喘息治療に加えて,NPPV を適用することが症状の早期改善に寄与することが示唆された.あわせると,小児の急性喘息患者において,NPPV の適用は臨床症状改善やバイタルサイン安定に有用であると示唆される. c.その他の病態 過去の小児の急性期NPPV に関する最大の観察研究は,2006 年のEssouri らによる単施設,5 年間114 例の症例集積報告である5).この報告では,小児NPPV の最大の適応は抜管後呼吸不全であり,肺炎,急性呼吸促拍症候群,免疫不全患者(の呼吸不全),急性冠症候群(による肺水腫)がこれに続く.成人領域でその有用性が確立されている急性冠症候群(による肺水腫)のサブグループ(n=9)での気管挿管回避率は100%であることが示されている5). 日本で行われた小児NPPV の診療実態調査において, NPPV の最大の適用病態は抜管後の呼吸不全である6).抜管後呼吸不全に対するNPPV の適用は,呼吸状態悪化後の治療的使用と,呼吸不全リスク群に対する予防的適用による呼吸不全/再挿管回避効果に分類される7). Essouri らの後方視的検討では抜管後呼吸不全におけるNPPV の治療的適用による挿管回避率は73%(41/61)であった5).Murase らは肝移植後の小児患者におけるNPPV の治療的適用が再挿管率を下げる可能性を後方視的検討により報告している8). レベルII レベルII レベルIV レベルII レベルII 表1 小児NPPV のランダム化比較試験 著者対象患者介入主要評価項目と結果その他の評価項目と 結果 Thill, 2004 RCT,クロスオーバー2 ヵ月~14 歳, 6気管支喘息BiPAP vs. 標準ケアIPAP/EPAP 10/5 2 時間後の臨床的喘息スコアの有意な減少Yanez, 2008 RCT 1 ヵ月~13 歳, 0ウイルス性肺炎,下気道炎BiPAP vs. 標準ケアIPAP/EPAP 12~18/6~12挿管率の有意な減少: 28% vs. 60% 1 および6 時間後のバイタルサイン改善Basnet, 2012 RCT 1~18 歳, 0気管支喘息BiPAP vs. 標準ケアIPAP/EPAP 8/5 24 時間までの酸素需要,臨床的喘息スコアの有意な減少