p.117 抽出テキスト
まったく治療法に制限を設けないなかで実施されるNPPV であり,改善しない場合は挿管人工呼吸への移行となる.カテゴリー2 は挿管をしないDNI の範囲で最大限の努力をする場合である.病状が悪化して改善が望めない場合は,家族が来るまでとか,別れの挨拶までといった期間を限定し,その後は呼吸困難緩和目的のカテゴリー3 に変更する.カテゴリー3 ではNPPV に伴う苦痛を与えない,コミュニケーションが取れなくなった人にはやらない,NPPV で呼吸困難がとれなければオピオイドを使用するといった原則のもとに行う,とされている. 3 DNI 広くDNI 全体を対象としたNPPV の分析疫学的研究は10 年以上前からいくつか報告されている.まず1999年に米国で行われた前向き多施設コホート研究では,急性呼吸不全でNPPV を受けたDNI 患者114 例中全体で43%が生存退院でき,PaCO2 高値が生存退院の良好な予測因子となった.疾患別では心不全とCOPD が癌,肺炎,その他より予後良好であった2).また,MGH での2001 年1 年間の前向き観察研究では,DNI にてNPPVを受けた全例137 エピソードで,死亡率はCOPD 37.5%,心原性肺水腫39%,non-COPD のII型呼吸不全68%,抜管後呼吸不全77%,I型呼吸不全86%,進行がん85%でLevy らの報告とほぼ同様で,予後予測因子としてはSAPS II,血清アルブミン値が有用としている3).また,医療者の側でICU 管理が適切でないと判断したDNI患者に対するスペインの調査では,NPPV を上限として一般病棟で管理した患者のうちCOPD 55%と心不全56%で軽快退院していた4).これらの報告からもともとNPPVが強く推奨されるCOPD,心不全に対しては,DNI の状態であっても良好な予後が示唆され十分に推奨されるものと考えられる.最近の報告としては2010〜2011 年に行われたフランスとベルギーのICU でのNPPV に関する前 向きコホート研究がある.NPPV を受けた全780 人のうち治療制限なしの574 人の死亡率は12%で,DNI 134 人の死亡率は44%であり,これまでの報告同様DNI 患者の死亡率はCOPD が他と比べて最も低かった(34 vs. 51%).注目されるのは90 日目も生存したDNI 患者はベースラインと比べてQOL の悪化はなく,患者や家族の不安,抑うつ,PTSD 関連症状もフルサポートの患者と同程度であった点であるa).つまりDNI の状態でNPPV を受けて生存した場合は,特にNPPV を受けたことによる後遺症としてのQOL 低下はあまりなかったと考えられる. 4 高齢者 高齢者に対するNPPV の成績も最近いくつか報告されている.まず2007 年から2008 年にかけてフランスのICU で登録を行った前向きコホート研究では,換気補助を要した1,019 人のうち全体で37%(376 人)がNPPV であったが,80 歳以上の超高齢者163 人(16%)では60%がNPPV,80 歳以下は32%(p<0.0001)と超高齢者ではDNI のためにNPPV となりやすかった(40%vs. 8%)が, DNI の死亡率は若年者と差がなかった.DNI を除くと死亡率は超高齢者のほうが全体で高いが,心原性肺水腫,慢性呼吸不全急性悪化,抜管後におけるNPPV においては差がなかった5).さらにNava らによる75 歳以上(平均 81.3 歳)の急性II型呼吸不全82 例のRCT では,NPPV と標準的治療法を比較して挿管実施基準に至った割合は(7.3%vs. 63.4%,p<0.001)で,死亡のオッズ比0.40(CI: 0.19〜0.83,p=0.014)であった.さらにABG,RR,Dyspnea score いずれもNPPV で有意に早く改善している6).これらの結果からは高齢者においてはもともとDNI としてNPPV が多く実施される傾向にあるが,特に急性II型 レベルIV 表1 病態別のNPPV の目標設定 カテゴリー1(制限なし)カテゴリー2(DNI)カテゴリー3(症状緩和) 定義DNI(挿管しない) (呼吸困難)緩和のみ目標で1 と同じ(家族の到着までなど)のためにわずかでも生存期間を延ばすつ安楽を最大限にするNPPV の終了 NPPV に耐えられないと同じNPPV をするほうがもっと苦痛,本人がNPPV 中止希望 失敗時の対応し,NPPV なしによる症状緩和のみとするNPPV なしによる症状緩和NPPV 実施場所ICU もしくは十分なモニターや慣れたスタッフのいる急性期病床ICU を含むさまざまな急性期病床.適切に訓練されたスタッフがいればホスピスでも可(文献1 より一部改変)