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しく,陽圧換気により虚脱した肺胞を開放させることが重要になる. b.ARDS における呼吸管理 日本では2004 年に日本呼吸療法医学会が「ARDS に対するClinical Practice Guideline(第2 版)」4)を発表し, 2010 年には日本呼吸器学会から「ALI/ARDS 診療のためのガイドライン第2 版」5)が刊行されているが,呼吸管理に関する両者の記述はほぼ同様である.両ガイドラインとも,気管挿管下での陽圧人工呼吸をARDS 患者に対する呼吸管理の基本としている.換気設定にあたっては,肺胞の過伸展や虚脱・再開放の反復による人工呼吸器関連肺損傷(ventilator-associated lung injury:VALI)を予防するための肺保護戦略が重視されている.これは,一回換気量を10 mL/kg 以下,吸気終末のプラトー圧を30cmH2O 以下になるよう設定するもので,その結果として肺胞低換気による高二酸化炭素血症が生じても許容する.また,肺胞の虚脱を防ぐためにPEEP を用いるが,至適レベルは動脈血酸素分圧,最高気道内圧,循環抑制の程度などを参考に決定される. c.ARDS におけるNPPV の適応 ARDS 患者においてNPPV は酸素化を改善し,呼吸困難や呼吸筋への負荷を軽減することが示されている6)が,その有効性についてはエビデンスが乏しい.CPAP のみでもガス交換は改善するが,呼吸筋への負荷の軽減は図れない6). Agarwal らは,ARDS 患者におけるNPPV の有効性を評価するためにメタアナリシスを行った7).1995 年から2009 年までに行われ,NPPV を施行されたARDS 患者の挿管率や死亡率を検討した13 件(計540 症例)の臨床研究をデータベースから抽出した8〜20).挿管率は30%から86%であり,ランダム効果モデルを用いたプール解析では挿管率48%(95%信頼区間39〜58%)であった(図1)7).死亡率は15%から71%であり,プール解析では死亡率35%(95%信頼区間26〜45%)であった(図2)7).挿管率,死亡率とも統計学的不均一性を認めたものの,ほぼ50% の症例でNPPV が失敗していることから,ARDS 患者に対するNPPV の施行にあたっては慎重であるべきと結論されている7) .一方,軽症(200Torr< PaO2/FIO2≦300Torr)の患者40 名を対象とした多施設共同ランダム化比較試験では,NPPV 群で挿管率が5%と有意に低く,他臓器の障害が少ないうえ,院内死亡率も低い傾向にあった.酸素化障害が比較的軽度の患者に対してNPPV を早期から用いることは有効かもしれない21) . Antonelli らによる多施設共同コホート研究では,147名のARDS 患者にNPPV が施行され,79 名(54%)で挿管が回避されるとともに,人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)の発現率の有意な減少やICU 滞在日数の短縮が報告された22).しかし,重症度スコア(SAPS II)が高い場合や,NPPV 開始後1 時間でP/F 比に改善がない場合は,NPPV 失敗の可能性が高いことが示された22) .また,NPPV の成功率は各施設のNPPV の使用経験に左右されるため,ARDS 患者にNPPV を実施するにあたっては,随時挿管に移行できる管理体制や経験あるスタッフが求められる22). 岡原らはARDS に対してNPPV を導入した57 例を検討し,NPPV で生存に至った38 例と挿管または死亡に至った19 例とを比較した23).NPPV 成否についての多変量解析の結果,呼吸回数はオッズ比0.82(95%信頼区間0.72〜0.94),重症度スコア(APACHE II)はオッズ比0.82(95%信頼区間0.67〜0.99)であり,いずれもNPPVの成否に関連する可能性が考えられた23).NPPV 成功率の目標を60%とした場合,呼吸回数30 回/分以上やAPACHE IIスコア17 以上の患者では達成困難と考えられ,そのような症例では挿管を検討すべきと結論されている23) . d.ARDS におけるNPPV の実際 ARDS におけるNPPV の適応は他疾患による呼吸不全の場合と同様であるが,できるだけ呼吸不全の初期治療 レベルI レベルII レベルIV レベルIV 表1 ARDS の新しい診断基準(The Berlin Defi nition)急性発症明らかな誘因または呼吸器症状の出現または悪化から1 週間以内胸部画像(単純X 線/CT)両側性陰影(bilateral opacities)(胸水,無気肺,結節の みでは説明できない) 肺水腫の原因心不全や輸液過量のみでは説明できない(可能なら心エコーなどの客観的評価が必要)酸素化障害軽 症 200mmHg <PaO2/FIO2 ≦300mmHg(PEEP/CPAP ≧5cmH2O)中等症 100mmHg <PaO2/FIO2 ≦200mmHg(PEEP ≧5cmH2O)重 症 PaO2/FIO2 ≦100mmHg(PEEP ≧5cmH2O) (文献2 より引用)