p.110 抽出テキスト
1 ARDS a.定義・病態生理 ARDS は,肺への直接的あるいは間接的な侵襲を契機とし,好中球主体の炎症によって肺胞隔壁(血管内皮,肺胞上皮)の透過性が亢進することによる非心原性肺水腫である1).肺への直接的侵襲としては重症肺炎や胃内容物の誤嚥などがあり,間接的侵襲としては敗血症が代表的である1).病理像は硝子膜形成を伴うびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)であり,臨床的に は表1 のように定義される急性呼吸不全である2).ARDSでは,肺胞腔内への水腫液の貯留とサーファクタント機能不全により肺胞が虚脱し,ガス交換が障害される.このような換気のない肺領域へも血流が保たれるため,シャント血流が増加する.ARDS における酸素化障害には拡散障害や換気血流比の不均等分布も寄与しているが,主たる原因は肺内シャントの増加である3).このため高濃度酸素を吸入させてもARDS の低酸素血症は改善が乏 各論A:急性呼吸不全 ARDS,重症肺炎 10 CQ 10 ARDS 患者の呼吸管理にNPPV を使用すべきか? CQ 11重症肺炎患者に対してNPPV を使用すべきか?回答:急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の呼吸管理として NPPV の有効性も報告されているが,気管挿管下の陽圧人工呼吸が基本である.メタアナリシスによれば約50%の症例でNPPV が失敗しており,ARDS 症例でのNPPV 施行に際しては慎重であるべきである.特に,全身状態が不良な患者やNPPV 開始後1 時間でP/F 比に改善がない場合には,挿管を検討すべきである.重症肺炎(免疫不全に合併した症例を除く)では,基礎疾患によってNPPV の推奨レベルが異なる.慢性閉塞性肺疾患(COPD)に合併した重症肺炎においては,NPPV が集中治療室滞在期間を短縮し,挿管率および死亡率を低下させることから,NPPV の使用が推奨される.一方,基礎疾患としてCOPD を持たない患者の重症肺炎に対するNPPV の有効性は明らかでなく,積極的に推奨する根拠がない.インフルエンザ感染後の急性呼吸不全に関しては,NPPV の失敗率が高く,軽症例を除いてNPPV は推奨されない. CQ10 推奨: 1ARDS 症例でのNPPV 施行については慎重であるべきである.【エビデンスレベルI,推奨度C1】2他臓器の障害が少ない軽症ARDS に対しては,NPPV の使用が推奨される.【エビデンスレベル II,推奨度B】CQ11 推奨: 1COPD 患者に合併した重症肺炎に対しては,NPPV の使用が推奨される.【エビデンスレベルII,推奨度B】2非COPD 患者に合併した重症肺炎に対しては,NPPV の有用性は明らかではない.【エビデンスレベルIV,推奨度C2】3インフルエンザ感染後の重症肺炎に対しては,軽症例を除いてNPPV は推奨されない.【エビデンス レベルIV,推奨度C2】