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p.106 抽出テキスト

1 はじめに

血液悪性疾患,固形癌に対する強力な化学療法,また,骨髄移植,臓器移植,ステロイド,生物製剤使用患者の増加により,免疫不全(immnocompromised)・免疫抑制下(immunosuppressed)の患者は世界的に増加している.これら免疫不全患者の呼吸器合併症は患者の予後を左右する重大要因のひとつである.免疫不全・抑制下の患者の急性呼吸不全は重篤化しやすく,従来から挿管,人工呼吸管理になることが多かった.気管挿管にも多くの合併症があり,人工呼吸管理中に,人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)などの感染症を免疫不全・抑制下患者では起こしやすく予後の悪化を招くことが多いとされる.免疫不全・抑制下患者の急性呼吸不全患者にNPPV の介入RCT が2 つ行われ,従来の人工呼吸器関連肺炎などの重篤な合併症の回避,減少などにより,患者の予後改善が得られ,COPD の増悪,心原性肺水腫などとともにその有効性が確認されたが1) ,その後,大規模な症例数の後ろ向き研究が行われ,若干の意見の追加が報告されつつある2).

2 免疫不全,免疫抑制下患者において行わ

れた2 つのRCT

40 例の臓器移植後患者を20 例ずつNPPV 有群とNPPV 無群で比較したRCT ではP/F 比の改善率(60% vs. 25%,p=0.03),挿管率(20%vs. 70%,p=0.002),

ICU 内での死亡率(20%vs. 50%,p=0.05)といずれもNPPV 有群のほうが無群より有意に治療成績が良好であった.ただし,院内死亡率は(35%vs. 55%,p=0.17)と有意差が出ていない3).臓器移植後の患者は急性呼吸不全状態からいったん回復しても退院までにさらに多くの合併症を起こす可能性を示唆している.

Hilbert らの52 例を26 例ずつの群に分けたRCT 報告の主な疾患は血液悪性腫瘍(30 例)であった.この報告では,挿管率(46%vs. 76%,p=0.03),重篤な合併症(50% vs. 80%,p=0.02),ICU 内での死亡率(38%vs. 69%,p= 0.03),院内死亡率(50%vs. 81%,p=0.02)ともNPPV 有群の治療成績が有意に良好であった.なお,挿管された患者はNPPV 有群,無群ともすべてその後死亡していた4).

両報告とも患者の基本病態は免疫不全・免疫抑制下と共通しているが,急性呼吸不全の原因となった病態が肺炎,心原性肺水腫,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)などさまざまであるにもかかわらずNPPV が有効であったとのことは注目されるところである.

3 対象患者

免疫不全,抑制下の患者,肝臓,肺,腎臓などの臓器移植後,骨髄移植後,高用量化学療法後の血液悪性疾患,副腎皮質ステロイドなどの薬剤治療後,後天性免疫不全

レベルII各論A:急性呼吸不全

免疫不全,免疫抑制下に伴う急性呼吸不全

9

CQ 9免疫不全を伴う急性呼吸不全の呼吸管理にNPPV を使用すべきか?

回答:血液悪性疾患・固形癌に対する強力な化学療法,あるいは骨髄移植・臓器移植・ステロイド使用

中の免疫抑制下の急性呼吸不全に対して,NPPV の介入ランダム化比較試験が2 つと大規模な後ろ向き検討が行われている.NPPV の使用は,挿管人工呼吸に移行する頻度を低下させることで感染症をはじめとする合併症の発生率を低下させ,予後の改善が期待できる.

CQ9 推奨:免疫不全患者の急性呼吸不全に対し,NPPV を人工呼吸管理の第一選択とすることを推奨す

る.【エビデンスレベルII,推奨度A】