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p.103 抽出テキスト

1 はじめに

周術期において,麻酔,手術侵襲,疼痛などによって呼吸機能や横隔膜機能が障害され,無気肺,肺炎,低酸素血症などの呼吸器合併症がしばしば発生する.これらの呼吸器合併症は術後早期から発生し,急性呼吸不全に進行することもあり,入院期間を延ばしたり死亡率を悪化させる可能性がある.周術期の呼吸器合併症を予防,治療する目的でNPPV が実施されている.しかし,周術期のNPPV の意義について,エビデンスは十分とはいえない1, 2) .周術期のNPPV について,手術部位別,目的別に検討する.

2 NPPV のエビデンス

a.腹部手術1)予防

NPPV が腹部手術後の呼吸機能低下を予防することは小規模なRCT で示唆されている.重症肥満に対する減量手術の術後12〜24 時間に,NPPV(BiPAP,IPAP 12cmH2O/EPAP 4cmH2O)を断続的に実施する群と通常の酸素療法を受ける群に振り分けると,NPPV 群で努力性肺活量,1 秒率,酸素化の悪化が軽度であった3). NPPV(CPAP 10cmH2O)と通常の酸素療法を比較したRCT でも,同様にNPPV 群で努力性肺活量,1 秒率,呼

気流量の低下が少なかった4).これらは20〜40 人の小規模な研究であり,入院日数短縮や呼吸器合併症減少には結びついていない.腹部大動脈瘤に対する開腹手術で, NPPV(CPAP 10cmH2O)に振り分けた群では通常の酸素療法に比べ,重篤な低酸素血症の頻度が減少したが,再挿管,ICU 滞在日数,院内死亡には差がなかった5).また,重症肥満患者に対する減量手術で挿管直前のpreoxygenation をNPPV(PSV 8cmH2O/PEEP 6cmH2O)で施行すると,酸素マスクに比べ酸素化の改善が速やかで大きかった6).このように,重症肥満患者や腹部膨満を合併する手術では,術前後に無気肺ができやすいので, NPPV の陽圧が酸素化や呼吸機能の悪化防止に役立つと期待できる. 2)治療

腹部手術後の低酸素血症に対する治療効果を調べた大規模RCT はあまりない.腹部手術で抜管後に低酸素血症を呈した患者を,NPPV(CPAP)を実施する群と通常の酸素療法を受ける群に振り分けたRCT では,NPPV 群で再挿管(1%vs. 10%),肺炎(2%vs. 10%)の発生頻度が低かっただけでなく,感染症や敗血症の頻度が低く,ICU滞在日数が短かった7).腹部手術後の低酸素血症には無気肺の関与が大きいので,NPPV が呼吸機能の改善に役立つと期待できる.挿管や手術に伴う無気肺

レベルII

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各論A:急性呼吸不全

周術期のNPPV

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CQ 8周術期の呼吸器合併症の予防・治療にNPPV を用いた呼吸管理は有効か?

回答:周術期においては,麻酔・手術侵襲などで呼吸機能や横隔膜機能が障害され,無気肺・肺炎・低

酸素血症などの呼吸器合併症がしばしば発生する.周術期の呼吸器合併症を予防・治療する目的でNPPV が使用され,腹部手術・胸部手術・心臓血管手術後の呼吸器合併症の予防・治療について複数のランダム化比較試験が行われ,術後の酸素化の改善・再挿管率の低下・肺炎の減少などの効果が認められている.適応を吟味しNPPV に習熟していれば,呼吸機能の改善を促進し呼吸器合併症を減らすことが期待できるが,そのエビデンスは十分ではない.

CQ8 推奨:周術期の呼吸器合併症の予防・治療にNPPV の有用性が期待できる.【エビデンスレベル

II,推奨度B】