p.90 抽出テキスト
第14章 先天性LQTS,CPVT女性患者の妊娠, 出産,産褥期における注意点 1 概略 遺伝性不整脈を有する女性の妊娠・出産・産褥期においては,多職種による管理体制を構築し,心イベント抑制のため治療継続が重要である179, 952).本章では先天性LQTSおよびCPVT 女性患者の妊娠・出産・産褥期における薬物治療,非薬物治療ならびに管理上の注意点を概説する.以下に要点を示す.あわせて,「2026 年JCS/JSOG ガイドラインフォーカスアップデート版 心血管疾患患者の妊娠・出産の適応と診療」953)を参照されたい. 先天性LQTS,CPVT 女性患者における妊娠,出産,産褥期の管理上の要点・ 多職種で母体および胎児のリスクを評価し,分娩・周産 期管理体制を整える・ β遮断薬適応例では,妊娠中から産褥期を通じて原則内 服治療を継続する・ とくにLQT2 では産褥期の心イベントリスクが高く,β 遮断薬の確実な継続が重要である・ β遮断薬はナドロールまたはプロプラノロールを第一選 択とする (R95)の割合は,わが国は32.6% で,他国(50.6 ~ 72.5%)と比べて著明に低い928).一方で,わが国では, SUDI の44.8% がその他の突然死(R96)と分類されており,こうした医師による分類の違いがSIDS の発生率を見かけ上低くしているかもしれない.SIDS 発生は生後2 ~ 4 ヵ月がピークで,生後6 ヵ月までに約90% のSIDS が発生する939).近年では死亡月齢が若年化しているとの報告もある940).SIDS は男性で多く発生する(男:女=6:4) 940). SIDS 児の同胞のSIDS リスクは一般人口より4.3 倍高いが,家庭の育児環境や遺伝的因子との関連性が考えられている941). 3 遺伝的背景,遺伝学的検査の意義, 予防への取り組み SUD やSUDI における遺伝学的検査陽性率は,用いる検査法や病原性判定に際してのACMG/ 米国分子病理学協会(Association for Molecular Pathology: AMP)ガイドライン採用の有無の違いにより報告間でばらつきがある.次世代シーケンシングで検査しACMG/AMP ガイドラインで病原性を判定した研究において,遺伝性不整脈/ 心筋症関連遺伝子の病的・病的可能性の高いバリアントは, SUD の52% 925),SCD の27% 15),SAD の13% に検出される942).乳児においては,同バリアントがSIDS の5.3%に認められる943).SIDS は外的ストレス,発達臨界期,脆弱性の3 因子が重複して発症する多因子疾患であり(triple risk model) 944),他の疾患群と比べて遺伝的影響は少ない可能性がある.遺伝学的検査を通じてSUD/SUDI の原因を特定することは,突然死リスクのある血縁者に対する早期介入につながるだけでなく,遺族に対するグリーフケアの点でも有用である945). 死因究明に当たっては,解剖,薬毒物検査,心臓病理検査などの包括的検査を行う946-948).遺伝性疾患が疑われる場合や病理検査後も明確な死因が不明である場合は,血液や組織サンプルを保管しておき,必要に応じて遺伝学的検査を実施する948, 949).これらの検査を通じて遺伝性疾患が特定された場合は,血縁者に対する遺伝学的検査も考慮する667, 950, 951).しかし,現状,遺伝学的検査が保険適用されている遺伝性不整脈/ 心筋症は先天性LQTS とHCM に限られており,その他の疾患に対する遺伝学的検査は研究機関自身の研究資金もしくは家族の自費診療にて行われている.得られた検査結果は遺伝カウンセリングを通じて血縁者に説明し,原因疾患に合わせた予防策を講じる.