p.88 抽出テキスト
いても,非ミスセンスバリアントは,ミスセンスバリアントと比較して,心臓伝導障害,上室不整脈,およびLVEF 低下の早期発症と関連していた781).一方,別の研究では,房室ブロックが致死性心室不整脈の追加の危険因子として報告されており909),男性,非ミスセンスバリアントの寄与は限定的とする報告もある910, 911). さらに,バリアントの遺伝子上の位置に関して,tail ドメインまたはexon 7–12 のミスセンスバリアントは致死性不整脈イベントが比較的少ないとの報告もある911a). 致死性心室不整脈の発症を予測するリスク計算ツール(LMNA-risk VTA calculator) 909)は2022 年版ESC ガイドライン3)に記載されているが,外部検証では,感度は高い一方で特異度が低く,リスクを過大評価する可能性が指摘されている911).そのため,本ガイドラインでは本ツールをリスク評価には採用していない. また,非虚血性心筋症全体において,心臓MRI による遅延造影の存在は,LVEF とは独立した致死性不整脈の強力な予測因子であり912-914),ラミン心筋症においても積極的な評価が望ましい. 一方で,伝導障害のみを有し,ペースメーカデバイスで長期に安定した経過をたどる症例も存在する.遺伝学的検査結果のみで予後を判断することは困難であり,年齢や臨床所見,前述の危険因子を総合的に評価することが重要である. 6.治療(図40,推奨表23 487, 906-908)) ラミン心筋症に疾患特異的な治療薬はなく,一般的な心不全治療薬による早期介入が発症予防や進行抑制に有効かどうかは明らかでない.競技スポーツへの参加は心臓突然死リスクを高めるため推奨されない915, 916).AF に対しては,血栓塞栓症リスクが高く,危険因子の有無にかかわらず早期から抗凝固療法を開始することが推奨される(推奨クラスIIa) 781, 880). 非薬物治療として,上室不整脈に対するカテーテルアブレーションが行われるが心房筋変性が高度なため再発率は高い917, 918).突然死予防に関しては,心停止,VF,血行動態不安定なVT の既往を有する症例では,二次予防目的のICD 植込みが推奨される(推奨クラスI).一方,ラミン心筋症例では,DCM における一次予防の一般的基準(LVEF ≦35%)よりも早期からICD 植込みを検討すべきである.一次予防として,1血行動態が安定した持続性または非持続性VT,2LVEF <45%,3 心室不整脈が原因と考えられる失神,4 高度房室ブロックのいずれかを認める症 例では,ICD 植込みが推奨される(推奨クラスIIa).また,徐脈治療としてペースメーカ適応を有するLMNA 病的バリアント保持者において,心臓MRI 遅延造影陽性,1 度房室ブロック,男性,LMNA 非ミスセンスバリアントのいずれかを有する場合もICD 植込みが推奨される(推奨クラスIIa).ただし,ラミン心筋症における突然死一次予防を目的とした ICD 植込みのリスク層別化に関するエビデンスは依然として限られており,今後のさらなる知見の蓄積が望まれる.ICD 植込みの判断にあたっては,疾患およびデバイスに関連するリスクとベネフィットを患者と共有し, shared decision making にもとづいて行うことが重要である.また,ICD 植込み適応例のうち,1LVEF<50% で 推奨表23 ラミン心筋症の治療に関する推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 二次予防LMNA 病的バリアント保持者で心停止, VF,血行動態不安定なVT の既往を有する場合には,ICD/CRT-D 植込み *を行う. I B 一次予防LMNA 病的バリアント保持者におけるAF または心房粗動に対しては,血栓塞栓症危険因子の有無にかかわらず,抗凝固療法の開始を考慮する. IIa C LMNA 病的バリアント保持者において,以下のいずれか1 つを有する場合には, ICD/CRT-D 植込み* を考慮する. 1血行動態の保たれた持続性VT またはNSVT 2LVEF <45% 3心室不整脈によると思われる心原性失神4高度房室ブロックIIa Cペースメーカ適応を有する,またはすでに植込み後のLMNA 病的バリアント保持者において,以下のいずれか1 つを有する場合には,ICD/CRT-D 植込み* を考慮する. 11 度房室ブロック2心臓MRI にて遅延造影陽性3男性4LMNA 病的非ミスセンスバリアントIIa C *LVEF <50% で,かつ,高率心室ペーシングが見込まれる場合または心室内伝導障害を有する場合には,CRT-D を考慮する(高率心室ペーシング:おおむね20 ~40% 以上の心室ペーシングが見込まれる状態を指す906, 907).心室内伝導障害の定義は,不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版),2024 年JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療におけるCRT 適応基準に準ずる487, 908).