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p.86 抽出テキスト

の浸透率は高く,30 代後半で60% を超え,60 代ではほぼ全例に何らかの心臓表現型が認められる781, 878, 888).

2005 年の報告ではおもな死因は心臓突然死(46%)であったが888),2010 年以降の研究では心不全死が最多で,次いで心臓突然死が多いとされており880, 881),わが国の多施設研究でも同様の傾向が示されている884).この変化は, ICD 植込みにより一定数の突然死が回避されるようになったことが寄与していると考えられる.予後については,7 ~ 8 年の追跡で8~13% が死亡したとの報告に加え878, 881),近年のわが国を含む報告では,3.5 ~5 年間で17~19%に達する高い累積死亡率が示されている880, 884).

3 遺伝的背景

LMNA は核膜の裏打ち蛋白質である核ラミナを構成するA 型ラミンをコードし,RNA の選択的スプライシングによりラミンA およびラミンC が生成される(図39).ラミンA,C は中間径フィラメントに属し,ほぼすべての分化した真核細胞で発現している.これらは多量体を形成して核ラミナを構築し,核の構造維持,クロマチン構造形成,遺伝子発現制御,DNA 損傷修復などに関与する889-891).LMNA病的バリアントにより多彩な臓器障害を引き起こし,横紋筋では,DCM と進行性心臓伝導障害を特徴とするラミン心筋

症1)やエメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー892),脂肪組織では,家族性部分性脂肪萎縮症(Dunnigan 型) 893),末梢神経では,シャルコー・マリー・トゥース病2B1 型894),さらに早老症としてハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS) 895)などをきたす.これらの疾患群は,総称してラミノパチーとよばれ896),約500 個のバリアントが報告されている.LMNA の病的バリアントは遺伝子全体に分布し,心筋症では,頭部および桿状領域に多いとされるが703, 781, 897),バリアントによる臓器特異性や加齢依存的な発症機序については十分に解明されていない.

心筋症における疾患発症機序として,ヘテロ接合の非ミスセンスバリアントでは蛋白量が半減するハプロ不全が主な機序と考えられており,一方,ミスセンスバリアントでは変異蛋白自体の機能障害が関与すると考えられている.臨床的には,非ミスセンスバリアントはミスセンスバリアントと比較して心イベントが多く880),より早期に発症することが報告されており781),後述するリスク評価においても危険因子の1 つとされている.

LMNA c.1824C>T などファルネシル化prelamin A の核膜蓄積

早老症(HGPS)

核ラミンA

ラミンC coil 1a coil 1b coil 2 Ig-fold coil 1a coil 1b coil 2 Ig-fold

coil 1a coil 1b coil 2 Ig-fold

頭部領域αヘリカルコイルドコイル桿状領域尾部領域

心筋症,筋ジストロフィー核局在化シグナル

核膜

細胞質

ラミンA/C

図39 ラミン心筋症の発症機序ラミン心筋症の分子メカニズム

・	核ラミナ構造異常(核膜脆弱化)・	メカノトランスダクション障害(LINC 複合体)・	シグナル伝達異常(MAPK,PDGF)・	クロマチン・遺伝子発現異常・	DNA 損傷応答(TP53 経路)・	ミトコンドリア機能異常・	炎症・線維化(cGAS–STING)