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p.85 抽出テキスト

第12章 ラミン心筋症

1 概論

ラミン心筋症(LMNA 関連心筋症)は,核膜の裏打ち蛋白質であるラミンA およびC をコードするLMNA の病的バリアントにより発症する常染色体顕性(優性)遺伝形式の心筋症であり,DCM とPCCD を特徴とする703).徐脈性不整脈を高率に認め,家族性ペースメーカ植込み例に潜在している場合がある.多くは成人期に発症し,伝導障害の進行にともないAF を合併しやすく,心原性動脈血栓塞栓症のリスクが高い.約半数の症例で左室収縮能低下による心不全を呈し,経過中に致死性心室不整脈による突然死をきたしうる.家族性の徐脈または伝導障害を認める症例では本疾患を鑑別に含め,左室機能低下をともなう場合にはとくに考慮するべきである.診断には遺伝学的検査を積極的に行う.治療は,抗凝固療法,突然死リスクに応じたデバイス治療,重症例では心移植を含めた包括的管理を行う.また,本疾患は浸透度が非常に高いことから,家系内病的バリアント保持者のフォローも重要である.

2 疫学

2.1 有病率・性差

ラミン心筋症は,特発性DCM の約5~10% を占めると報告されている704, 877, 878).また,家族性DCM に房室伝導障害をともなう集団ではLMNA 病的バリアントが約30%に検出されることが報告されている879).本疾患は,常染色体顕性(優性)遺伝形式をとり,性差に関しては,明らかな偏りは報告されていないが704, 878),男性は致死性心室不整脈発症の危険因子の1 つとされている880, 881). 2.2 経過と予後

ラミン心筋症はDCM の中でもっとも予後不良な一群である882, 883).多くは30 ~40 歳代で心臓伝導障害(SSS,房室ブロック,左脚ブロックなど)を発症し,AF・心房粗動を高率に合併する.これにともない心原性動脈血栓塞栓症(脳塞栓症など)のリスクが高い781, 884).本疾患では心房筋の変性が高度で,AF は虚血性脳卒中リスクを約9 倍に増加させ884),LMNA の病的バリアント保因自体も血栓塞栓イベントの独立した危険因子(約4.8 倍)と報告されている885).伝導障害は進行性で,多くの症例においてペースメーカあるいはICD などのデバイス植込みが必要となる.その後,40 代後半から左室収縮不全へと進展し,50 代半ば以降には末期心不全や死亡に至ることがある781, 878, 881, 884, 886)(図38) 781).また,経過中にVT・VF をきたすことが多く(平均発症年齢49 歳),心機能が比較的保たれている段階で突然死に至る症例もあり,注意を要する781, 887).病的バリアント保持者における心臓表現型(伝導障害を含む)

図38 ラミン心筋症の臨床経過* 70 歳までの各表現型の浸透度(Nishiuchi S, et al. 2017

781)を参考に作成)バリアント保有例

における浸透度*

約50%

約70%

約70%

90% 以上

心室不整脈

LVEF 低下

AF

伝導障害(心不全進行)

(脳梗塞の原因)

(VT/VF,突然死の原因)

10 20 30 40 50 60 70 (歳)

デバイス植込み(PM,ICD,CRT-D)