p.84 抽出テキスト
という既存の危険因子を用い,持続性心室不整脈発症リスクを予測するモデルである.モデルの妥当性は複数の外的検証により確認されているが,ICD 植込みを推奨する明確なカットオフ値は定まっていない860, 861).さらにPKP2 以外の遺伝子にバリアントを有する患者や,バリアントが同定されていない患者では予測能が低下することが指摘されており861),DSP やFLN(p.Arg14del)のバリアント保持者についてはおのおの専用のrisk calculator が発表されている817, 862).日本人ARVC 患者ではPKP2 バリアント保持者が約20% と少ないため801),ARVC risk calculator 858)による評価を適応できるかは不確定であるため,本ガイドラインでは採用していない.心臓突然死のみを予測するモデルも発表されているが863),2024 年時点では外的検証が実施されておらず,その臨床的有用性は不明である.現時点では,年齢,既存の危険因子,ICD 治療のリスク・ベネフィットを考慮し,十分なインフォームドコンセントを患者および家族に行ったうえでICD 植込みを総合的に判断する. 5.4 治療方針 ARVC は現時点で根治治療がなく,生命予後の改善(突然死予防を含めた)と症状,生活の質の改善が治療目標となる.ARVC の心室不整脈の治療に関する推奨を推奨表22 に示す. 5.4.1 心室不整脈 a. 生活指導 ARVC 患者では,運動や交感神経緊張が心室不整脈発生の契機となる.したがって,心室不整脈のリスクを軽減し疾患進行を抑制するために,ARVC 患者の激しい運動に対する制限が推奨される864-867).ARVC の原因遺伝子に病的バリアントを有している無症状の血縁者についても,心室不整脈発症予防のため激しい運動は避けるのが妥当である.ARVC 患者あるいは病的バリアントを有している血縁者がアスリートとなる選択を行う際には,患者・家族と医療者による継続的な話し合いと共同意思決定が必要である(推奨表22). b. 薬物治療 β遮断薬が第一選択であり,心室不整脈の抑制には最大耐用量まで漸増する868).ソタロールの効果は限定的である869).β遮断薬のみで効果不十分の場合は抗不整脈薬を併用する.少人数のコホートからはアミオダロンの優位性が報告されているが869),長期治療では副作用に注意する.左室収縮能が保たれている患者ではフレカイニドとβ遮断薬の併用が有効であるとの報告がある870)(推奨表22). c. 侵襲的治療 突然死予防のためリスク評価(上述)にもとづいたICD植込みを行う(図37).カテーテルアブレーション治療はVT の発生を減らし,ICD 頻回作動(電気的ストーム)抑制に有用であるが(推奨表22),再発率が高い点に注意する855, 871, 872). 5.4.2 その他 a. 心不全「2025 年改訂版心不全診療ガイドライン」に準ずる873).左心機能低下を合併した重症心不全患者に対しては,左心補助人工心臓/ 両心室補助装置植込みや心移植を行う. b. 心室瘤 ARVC では右室を中心に心室瘤が形成され,心室内血栓の原因となる874).右室内血栓は肺塞栓症や奇異性塞栓症の原因となる.心室内血栓が確認された場合,抗凝固療法を行う.予防的抗凝固療法の有効性についての前向き試験はなく,治療効果と出血性合併症のリスクのバランスをふまえて開始するかどうかを十分検討する必要がある. c. 心房不整脈 顕性期以降に出現するAF に対してはアミオダロンによる洞調律維持744)あるいはβ遮断薬による心拍数コントロール3, 855),抗凝固療法3, 875)を行う.AF 発現早期であればカテーテルアブレーションを検討してもよい825, 876). 推奨表22 ARVC の生活指導および不整脈治療に関する推 奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 強度の高い運動を避ける. I C 心室不整脈に対しβ遮断薬を投与する. I C β遮断薬のみで心室不整脈が抑制できない患者に対し,アミオダロン併用を考慮する. IIa C左室収縮能が保たれている患者に対し, β遮断薬とI 群抗不整脈薬の併用を考慮する. IIa C β遮断薬/ 抗不整脈薬治療を行ってもVTを繰り返す,またはICD の適切作動や頻回作動を起こす患者のVT に対し,カテーテルアブレーションを考慮する. IIa C