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p.79 抽出テキスト

4 診断

4.1 臨床経過・症状

ARVC は大きく3 つの病期に分けられる800).早期は構造的異常がないか,あっても軽度で,むしろ不整脈リスク(運動時)が高い.最初の心事故が突然死ということもある.次は顕性期でVT などが出現し,右室を中心とした(一部は左室にも)構造的異常が認められる.後期ではさらに右室および左室の心筋障害が進行し,右心不全あるいは両心不全が病態の中心となる.

このような病態の経過にともない,不整脈および心不全にともなった動悸,めまい,(とくに労作にともなう)失神,呼吸困難,胸痛,そして心停止/ 心臓突然死といったさまざまな症状が出現する800, 822-824).心室不整脈として,PVC, VT,VF があり,AF を含む持続性(≧30 秒)上室性不整脈の合併も22% で認めるとされる825).病初期にはARVCとしての構造的・機能的異常が軽度で無症状の場合もあり,病態進行にともなって症状が出現する.一般的に臨床症状は20 ~40 歳代で明らかとなる場合が多い800).注意すべき点は,ARVC 症例の10~20% において初発症状として心停止/ 心臓突然死を認めることがあり,そのうち72% が労作中であったとの報告もある823, 826, 827).心不全にともなう症状は,初期には軽度であるが疾患進行にともなって増悪し,一部症例では難治性心不全により移植適応となる828, 829).難治性心不全よりも少ないが,難治性心室不整脈により移植適応となる場合もある.最初の症状が35 歳

以下で出現することは心移植が必要となる予測因子とされている828).

4.2 診断基準

ARVC 診断において2010 年に発表されたTask Force Criteria(2010-TFC)が現在でも標準的な指針と考えられる830).その後,画像診断と遺伝学的検査の進歩,高頻度の左室病変合併などから,2019 年のHRS エキスパートコンセンサスステートメント793),そして2020 年のPadua criteria 831)においてACM および不整脈原性左室心筋症(arrhythmogenic left ventricular cardiomyopathy: ALVC)という包括的名称とあわせて診断基準が提唱された.しかし,この名称と診断基準の妥当性に関しては議論の余地があり,2020 年の国際エキスパートレポート832)では原則2010-TFC を踏襲し,ACM およびALVC に関するコメントは限定的となっている.そのため,本ガイドラインでもARVC に関する診断基準は2010-TFC を基本指針として掲載する124, 793)(表22) 830).2010-TFC では14 歳以下では再分極異常でのARVC の診断基準は提唱されていないが,わが国における小児のARVC をまとめた報告では, V1 ~V3 の陰性T 波,前胸部誘導のT 波の不連続性がARVC の有用な所見となりうることが報告された833).

4.3 画像・組織診断

4.3.1 経胸壁心エコー(図33)

右室の拡大に加え,局所的あるいはびまん性の収縮不全,瘤形成を,また進行にともない顕著化した左室病変を認める.右室拡大については肺高血圧や肺塞栓症,右室梗塞などとの鑑別も重要であるなど,心エコーでの異常所見はARVC に特異的ではなく,また右室の観察が困難な場合もあり,近年はMRI の重要度が増加している.

4.3.2 MRI(図34)

右室の拡大,駆出率低下,壁運動異常・菲薄化・瘤状変化・部分的突出などを認め,心筋線維化,脂肪浸潤の評価も可能である.右室のみならず左室病変の検出感度も心エコーに比べて高い.2020 年に発表されたARVC の新しい診断基準,Padua criteria では線維化を示す遅延ガドリニウム造影像が診断基準に含まれている831).

推奨表20  ARVC における遺伝学的検査に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

臨床的もしくは剖検でARVC と診断された人に対し,ARVC の原因遺伝子として確立された遺伝子の遺伝学的検査を行う. I C ARVC の原因遺伝子として確立されたすベての遺伝子の遺伝学的検査を行う. I C遺伝カウンセラーや専門の臨床医によって,3 世代にわたる家族の病歴聴取を行う. I C遺伝学と循環器学の専門家によって構成されたチームにより,実施される遺伝学的検査の解釈を考慮する. IIa C