p.74 抽出テキスト
のスクリーニングとして家族歴を聴取することはきわめて重要である.診断には心電図記録が必須であり,「2022 年改訂版不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」に詳細が記載されている124).また家族性AF(またはまれな病的バリアントが比較的同定されやすい45 歳以下での早期発症例)では,遺伝性不整脈や心筋症に合併することがあるため注意を要する.たとえば,AF の背景に先天性SQTS やBrS がある場合,家系内の突然死に関する家族歴の聴取が必要である.さらに,HCM やDCM に合併することもあり,AF 診断時には画像所見を含めた評価が必要である33, 74, 740-743). 家族性AF の診断基準は確立していないが,AF 罹患率が低い60 歳未満での発症や,家系内に若年発症AF 患者が複数いる場合は,家族性AF も考慮する. 5 治療 AF の基本的な治療戦略である薬物治療(レートコントロール,リズムコントロール,抗凝固療法)およびカテーテルアブレーションを主軸とした非薬物療法については,家族性AF と非家族性AF で違いはない.詳細については「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」744)および 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)」33)を参照のこと.家族性AF に対する薬物療法で注意すべき点は,基礎心疾患を考慮し適切な種類・時期を選択することである.たとえばBrS に合併したAF では,Ic 群の抗不整脈投与によりコブド型心電図変化が出現または増強し,致死性不整脈発症リスクが高まる恐れがある.またHCM に合併したAF では塞栓症のリスクが高いため745, 746),若年者においても早期の抗凝固療法が必要である747, 748).さらにHCM 合併AF では,薬物療法と比較し,アブレーション治療の優位性が高くないため,その適応について慎重に検討する必要がある749-751). AF 患者を対象としたGWAS で得られた疾患感受性バリアントについて,4q25 にあるPITX2 領域のバリアントは発症リスクのみならず752-754),抗不整脈薬への感受性755-757)やアブレーション治療の効果判定758-764)にも有用であることが報告されている.2024 年のわが国における3,067 人のAF 患者を対象にした報告でも,AF アブレーション治療後の再発とPITX2 領域のバリアントが関連していることが示された765).ただし,2026 年3 月現在,バリアントにもとづいた治療は実施されておらず,今後の検証が必要である. 第10章 家族性洞不全症候群(SSS) 1 概論 SSS は,一般的に加齢や器質的心疾患にともない発症し,高齢者において有病率の高い徐脈性不整脈疾患である.またSSS は,さまざまな臨床病型(洞徐脈,洞停止,洞房ブロック,徐脈頻脈症候群)を示す広い疾患概念である. SSS は洞結節の発生と分化,または洞結節細胞における活動電位形成の異常,つまり洞結節機能不全(sinus node dysfunction: SND)によって生じる.一方,心筋細胞の線 維化・変性が関与する洞結節から心房への伝導障害(洞房進出ブロック)によっても発症する. SSS で家族内発症や若年者発症を認めることがあり,遺伝学的要因の関与が示唆されてきた766).このうち家族内集積があり,遺伝性の明らかなものを家族性SSS と呼称している766, 767).しかし厳密な定義はなく,他の遺伝性不整脈の表現型の1 つとして報告されることが多い.また,伝導障害をともなって生じる家族性SSS は,進行性房室ブロックや脚ブロックを主体とするPCCD に包括されることもあり,両者の遺伝学的背景は一部共通している.さらに