GL検索 v0.1.0
画像は 70 ページを描画したものです
page 70

p.70 抽出テキスト

変異キャリアの約半分に表現型が出現する.

3.1 PCCD の原因遺伝子

SCN5A,TRPM4,LMNA が主要な原因遺伝子であり(表18) 330, 331, 404, 406, 419, 427, 694-704),PCCD の遺伝学的検査は保険適用されていないものの,PCCD 症例および血縁者では,これらの遺伝子を対象とした遺伝学的検査が推奨される.本章ではLMNA 以外の遺伝子について概説する(LMNA については第12 章参照).

SCN5A は洞結節の中心部を除くほとんどすべての心筋細胞に発現しており,心臓の電位依存性Na チャネル(INa)をコードする.SCN5A の機能喪失型バリアントによるINaの機能減弱は,心筋活動電位の立ち上がりを抑えることにより刺激伝導系の伝導障害を起こし330, 694),INa 減弱の程度が強いほど伝導障害が強い404).SCN5A はBrS の主要な原因遺伝子であるが,SCN5A の機能喪失型バリアントの54% がBrS 単独,3% がPCCD 単独の表現型をきたす406).またBrS はPCCD を高率に合併し331, 419, 427),伝導障害の合併は予後予測因子の1 つとなる.SCN5A の機能喪失型バリアントは,他にSSS,AF,IVF,DCM など多彩な表現型をきたし,複数の疾患を合併しうる695).これらの疾患が同定された場合にはPCCD 合併の有無を評価し,一方,PCCD 患者およびその血縁者においてはこれらの疾患の合併の有無の評価を行い,リスクに応じて治療方針を決定する.

TRPM4 は,Ca2+活性化非選択性陽イオンチャネル(CAN)をコードし,発現は遍在しているが,心臓ではプルキンエ線維に多く発現している705).TRPM4 バリアントによるCAN の機能増強,機能減弱ともにPCCD をきたすことが報告されている698, 699, 706).TRPM4 バリアントはBrSやLQTS をきたすとの報告があるが700-702),現時点ではこれらの疾患の原因遺伝子として確実とはいえない.まれな原因遺伝子が他にも複数報告されている707-716). 4 診断

4.1 心臓伝導障害による症状・徴候

PCCD では,心臓の刺激伝導系が障害され,心電図上,脚ブロック,房室ブロックの所見を呈する.症状は伝導障害の進行度により異なり,心電図異常のみを示す無症候例から,徐脈性不整脈にともなう脳虚血症状により,めまい,失神(Adams-Stokes 発作),突然死をきたしうる症例まである.

4.2 遺伝型による臨床経過・ 心臓伝導障害以外の臨床症状

一部の遺伝型においては,特徴的な臨床経過が示されている.SCN5A バリアント陽性の PCCD では,発症年齢および重症度はさまざまである.小児期に伝導障害を呈しペースメーカ治療を要する例から717),成人後に心電図異常として認められるのみ,あるいは加齢にともなう伝導障害の出現が早まる程度にとどまる例まで幅広い718).また,同じバリアントを持つ家系内でも表現型に差異を認める694, 719).BrS,DCM とのオーバーラップや,SCN5A-E1784Kのように,LQTS3 とBrS,PCCD のオーバーラップを起こしうるバリアントも報告されている720).LMNA バリアント陽性例に関しては,第12 章を参照のこと.

4.3 診断基準の提唱

PCCD に確立された診断基準はないが,本疾患の臨床的特徴を踏まえ,2013 年の改訂前ガイドラインにて下記の4

表18 PCCD の原因遺伝子

原因遺伝子蛋白合併しうるおもな不整脈・症候群/ 心筋症

(心外症状)遺伝形式文献

SCN5A INa(Nav1.5) BrS,SSS,AF,IVF,LQTS/DCM AD 330, 331, 404, 406, 419, 427, 694, 695, 701, 702 TRPM4 Ca

2+活性化非選択性陽イオンチャネル(CAN) BrS *,LQTS * AD 696-700

LMNA核膜構成蛋白(ラミンA/C) SSS,AF,VT/DCM(筋ジストロフィー) AD/AR 703, 704 AD:常染色体顕性(優性)遺伝,AR:常染色体潜性(劣性)遺伝,

*確実とはいえない(文献330, 331, 404, 406, 419, 427, 694-704 を参考に作成)