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p.69 抽出テキスト

は,伝導障害を有する,あるいはペースメーカ植込みをうけるリスクが約60% 増加することから680),伝導障害には遺伝的要因の関与が強いと考えられる.

若年時に房室ブロックを理由としてペースメーカ植込みをうけた患者の多くがPCCD と考えられるが,ペースメーカ植込みをうけた全患者のうち,55 歳以下は72/3,124 人(2.3%) 681),50 歳以下は35/2,510 人(1.4%) 682)であった.

一方,若年時にペースメーカ植込みをうけた患者における,特発性または遺伝性の割合についての報告がある.50歳以下で房室ブロックによりペースメーカ植込みをうけた517/1,027 人(50%)は原因不明で,遺伝性は6 人(0.6%)であった683).また,ペースメーカ植込みをうけた全患者2,510 人中50 歳以下の特発性高度房室ブロックは15 人(0.6%)であり,その有病率は年間10 万人に0.7 人と算出されている682).

わが国における伝導障害の疫学研究に,病院で記録された心電図を基礎とした報告がある.器質的心疾患を有する例も含めて,0.4% にQRS 幅延長がみられた684).また, PQ 間隔,QRS 幅が経時的に延長する症例では心不全入院,心血管死,総死亡のリスクが高いことも示されている.

2.2 小児における心臓伝導障害

先天性房室ブロックは1.5 ~2 万出生に対し1 人とされ685, 686),新生児の先天性房室ブロックは9 割以上の症例が母体由来の抗SS-A/Ro・SS-B/La 自己抗体による新生児ループスである687, 687a).

新生児ループスや器質的心疾患が除外された小児の房室ブロックの予後や家族歴に関する疫学研究がある.15 歳未満の(子宮内診断も含む)小児の心臓伝導障害141 人(女性72 人,1 度および2 度房室ブロック41 人,完全房室ブロック100 人)の検討では,1 度および2 度房室ブロックの71% は平均2.8 年の追跡期間中に完全房室ブロックに移行した688).10 歳までに80% でペースメーカ植込みが必要となったが,死亡やDCM の出現はみられず,予後は良好であった.同コホート130 人の両親の心電図を調べたところ,伝導障害は50.8% にみられ,PQ 間隔の延長が18.5%,右脚ブロックが39.2%,左脚ブロックが15.4% であった.また突然死の家族歴が1.4%,PCCD の家族歴が11.1% にみられ,SCN5A のみ解析したところ2 人に病的バリアントを認めた689).小児の心臓伝導障害で新生児ループスや器質的心疾患が除外された場合は,遺伝の関与が濃厚であることが示された.

一方,学校健診での心臓伝導障害に関する報告がある.先天性心疾患を除いた伝導障害は小学校および高校健診で0.49%(小学生0.32%,高校生0.63%)にみられ,不完

全右脚ブロックが0.31%,完全右脚ブロックが0.11%,心室内伝導障害が0.014%,1 度房室ブロックが0.044%,2度房室ブロックが0.0046%,完全房室ブロックは0.0021%であった690).伝導障害は男児にやや多い傾向があり(男児0.54%,女児0.44%)2 度房室ブロック,不完全・完全右脚ブロック,心室内伝導障害は有意に男児に多かった.伝導障害の有病率は年齢とともに高くなり,とくに不完全・完全右脚ブロック,1・2 度房室ブロックは高校生で有意に高率であり,完全房室ブロックは小学生で0.0005% (1/197,012)ときわめてまれであるのに対し,高校生では0.0034%(8/235,154)とまれながらも有病率の上昇がみられた.これらのことから学校健診はPCCD の抽出に有用であると考えられる.

2.3 神経筋疾患と関連するPCCD

筋強直性ジストロフィー1 型やエメリー・ドレイフス型筋ジストロフィーなどの神経筋疾患ではしばしば,心筋症や伝導障害,心房・心室不整脈を合併する.一般にこれらの不整脈は心筋症や重症心不全にともなって発生するが,一部の神経筋疾患では心筋症・心不全なしに,あるいは先行して伝導障害のみがみられることや,伝導障害の進行にともなって心不全症状が出現して心筋症へと至ることもある691).このようにPCCD と神経筋疾患にはオーバーラップがあり,完全に分離することは難しいと考えられる.

3 遺伝的背景

本ガイドラインで定義するPCCD と考えられる患者の遺伝的背景に関する知見が集積されはじめている.大多数がPCCD と考えられる若年時にペースメーカ植込みをうけた患者(ペースメーカ植込み時年齢50 歳以下が15 人または39 人,55 歳以下が15 人,65 歳以下が23 人の異なるコホート)では,PCCD の疾患関連遺伝子にACMG で定義される病的(pathogenic)または病的の可能性あり(likely pathogenic)と分類されるバリアントが7 ~48%,意義不明のバリアント(variant of unknown significance: VUS)まで含めると38~67% 同定される681, 682, 692, 693).

多くのPCCD は常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる.しかし,神経筋疾患とオーバーラップするPCCD の一部は伴性(X 連鎖性)遺伝形式をとり,男性では高率に表現型が出現するが,女性ではX 染色体不活化の影響もあり,