p.66 抽出テキスト
5.2 治療 5.2.1 薬物治療 BrS に有効な薬物はERS にも有効である.イソプロテレノール点滴静注はストームの抑制にもっとも有効な薬剤である.その後の内服薬としてはキニジンの有効性が高い617).日本人にはキニジンによる悪心や下痢などの消化器系副作用が多いことも知られている.ベプリジルやシロスタゾール,あるいはこれらの併用もVF 抑制に有効であることが報告されているが485, 665, 666),長期的な有効性については不明である. 5.2.2 非薬物治療 有症候性ERS において,VF 既往あるいは心肺停止蘇生歴を有する症例はICD 植込みの推奨クラスI適応である.持続性頻脈性心室不整脈の既往がある場合も推奨クラスI とした.2016 年APHRS/EHRA/HRS/SOLAECE 合同会議397),および2022 年版ESC ガイドライン3)ではICD の推奨クラスIIa 適応は設定されていない.「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年改訂版)」1)では,推奨クラスIIb 適応として,失神,けいれん,夜間の苦悶様呼吸を有し,かつ濃厚な若年性心臓突然死家族歴を有する症例,無症候であっても,高リスク心電図所見を有し,かつ濃厚な若年性心臓突然死家族歴を有する症例があげられている.家族歴については,VF 既往例や失神例においてVF 発症の危険因子とはならないとする報告もある448, 664).本ガイドラインでは2022 年版ESC ガイドラインに準拠し,不整脈性失神例において,高リスク心電図所見,若年性突然死の家族歴,ERS の家族歴のいずれか1 つを有する場合をICD の推奨クラスIIb とした(推奨表18).無症候例では,ICD の有用性に関する明らかなエビデンスは乏しいが,高リスク心電図所見を有し,かつ濃厚な若年性心臓突然死家族歴またはERS の家族歴を有する場合をICD 植込みの推奨クラスIIb 適応とした. ERS におけるILR 植込みのエビデンスは限られているが,フランスの多施設研究において,J 波をともなう失神例84 人にILR 植込みが行われ,平均68 ヵ月のフォローアップ期間中に20 人(23.8%)で失神の原因が同定された.おもな原因は心室不整脈ではなく,徐脈性不整脈であっ た664).本ガイドラインでは,ER をともない不整脈性失神が疑われる場合にILR の植込みを推奨クラスIIa とした. ERS に対するカテーテルアブレーションは,VF の起源となる同一波形のPVC が頻発している場合は,PVC をターゲットとすることができる.Haïssaguerre らは,8 人で26 ヵ所のPVC 発生源がマッピング可能で,心室起源が16 ヵ所,プルキンエ起源が10 ヵ所であったことを報告している615).Nademanee らは,再発性VF を有する18 人のERS 症例に対して心内膜,心外膜マッピングを行い,11人でER の局在に一致する心外膜領域に脱分極異常が示唆される異常電位を認め,アブレーションによりVF が抑制されたことを報告している501).残りの7 人では異常電位は認められず,プルキンエ起源PVC へのアブレーションが有効であったことを報告している.薬剤抵抗性のVF の場合,カテーテルアブレーションは有効な治療となりうるため,推奨クラスIIb の適応としたが,経験豊富な施設で考慮されるべきである.カテーテルアブレーションの長期的な有効性については今後さらなる症例の集積が必要である. 推奨表18 ERS に対するICD・ILR 適応の推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心肺停止蘇生歴またはVF 既往を有する症例に対し,ICD 植込みを行う. I B不整脈性失神が疑われる症例に対し,ILR植込みを考慮する. IIa C不整脈性失神,けいれん,夜間苦悶様呼吸の既往のいずれかを有し,高リスク心電図所見,濃厚な若年性心臓突然死の家族歴,ERS の家族歴のいずれかを認める症例に対し,ICD 植込みを考慮してもよい. IIb C無症状だが以下の高リスク心電図所見を有し,かつ濃厚な若年性心臓突然死の家族歴,またはERS の家族歴を有する症例に対し,ICD 植込みを考慮してもよい. 1 下側壁の広範な誘導におけるJ 点上昇2 0.2 mV を超えるJ 点上昇3 ST 分画が水平型または下降型IIb C