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p.64 抽出テキスト

することがあり,脱分極異常の関与が示唆されている651, 652).期外収縮前後,ペーシング,バルサルバ法,運動負荷やイソプロテレノール負荷にともなう心拍変動は,J 波の成因評価に役立つ可能性がある653, 654).

BrS の診断に有用なNa チャネル遮断薬負荷は,ERS においてJ 波の減高を呈することが多い655).ただしこれは,負荷後に左室心外膜局所での単極電位記録においてJ 波は増強しているものの,心電図上はQRS 幅の延長にともないJ 波が埋没するためと考察されている656).治療薬として用いられるイソプロテレノール,キニジン,シロスタゾールは一般にJ 波を減高させる485, 615, 617, 653, 657, 658).一方,プロプラノロールやベラパミルはJ 波を増高させるとの報告もある653).アセチルコリンの冠動脈内投与でJ 波の出現や増大が報告されているが,確立された負荷試験ではない659).

4.4 鑑別診断

心電図におけるER は,心室内伝導障害を有する例では判読が困難な場合がある296).ER は,致死性不整脈をきたしうるさまざまな心疾患において認められ,BrS,ARVC,虚血性心疾患,心筋炎,心外膜炎,心臓腫瘍などが鑑別診断としてあげられる296).とくにER がBrS に合併した場合,VF 発症の高リスクになることが示唆されており272, 412, 413),高位肋間やNa チャネル遮断薬負荷などの心電図波形評価によるBrS の除外が重要である.また冠攣縮によりER が出現し,失神やVF をきたすことがあるため,鑑別診断として重要である660).心疾患以外の原因としては,低体温症や電解質異常(低Ca2+血症,高K+血症)などがあげられる296, 616).

4.5 診断基準

ERS は,器質的心疾患をともなわないVF または多形性VT 症例において,ER(4.2 参照)を認める場合に診断される(表17) 2, 3).原因不明の心肺蘇生例や心臓突然死例も,

ER を認める場合にはERS と診断されうるが,冠攣縮を含む心疾患やてんかんなどの除外は重要である.ER は健常者の5 ~20% 程度に同定されるが,現時点ではERS の診断には臨床症状の存在が必須である.2016 年のHRS/ EHRA/APHRS カンファレンスレポートでは,ERS の診断基準として,臨床症状および心電図所見に家族歴と遺伝子診断を加えた上海スコアが提唱された296).しかし,わが国においてERS と診断される患者のうち,突然死の家族歴を有するのは10% 程度にとどまる639).また,表15 の基準でERS と診断された症例のうち,J 点上昇が0.2 mV 未満で家族歴を有しない症例は,上海スコアでは「疑い」の診断基準しか満たさない.このように,無症候性ER 例の取り扱いを含め,今後さらなる検討が必要である.

5 リスク評価・治療

5.1 リスク評価

VF 既往例および心停止からの蘇生歴を有するERS 例におけるVF 再発の危険因子に関する報告は認めるものの,失神例や無症候例におけるリスク評価は困難である.健診やスクリーニングによりER を認めた場合であっても,将来的なVF 発症の危険性はきわめて低く,現時点で検査所見のみでVF 発症を予測することは困難であると考えられる.

5.1.2 12 誘導心電図

12 誘導心電図において,下側壁の広範な誘導におけるJ点上昇,0.2 mV を超えるJ 点上昇618),ST 部分が水平型または下降型619)が,VF 発症の高リスク心電図所見として報告されている.しかし,これらの所見は健常者において

表17 ER およびERS の診断基準

ER の診断12 誘導心電図において,下壁誘導の2 誘導以上または側壁誘導の2 誘導以上,あるいはその両者において0.1 mV 以上のJ点上昇(=ノッチ型またはスラー型のJ 波)を認める場合ERS の診断以下の症例において,早期再分極を認める場合・器質的心疾患を伴わないVF 症例,または多形性VT 症例・原因が明らかではない心肺蘇生症例,または心臓突然死症例(Priori SG, et al. 2013 2),Zeppenfeld K, et al. 2022 3)を参考に作成)