p.63 抽出テキスト
ERS やVF リスクに関するポリジェニックリスクスコアは報告されていない. 4 診断 4.1 臨床症状 ERS の臨床症状としては,VF にともなうめまい,失神,苦悶様呼吸,心肺停止,心臓突然死などがあげられる.症状の出現はBrS と同様に,夜間の睡眠中や安静時,あるいは低強度の身体活動中に多いとされている296).ただし一部の症例ではそのような傾向は認めないとする報告もある638).また,わが国からはAF を23% に合併するという報告がある639). 4.2 心電図診断 VF を有する患者において,12 誘導心電図でER を認める場合にERS と診断される.一般的に,ERS 診断基準となるER は,下壁誘導の2 誘導以上,または側壁誘導の2誘導以上,あるいはその両者に認められる0.1 mV 以上のJ 点上昇と定義されている.ER はその波形からスラー型およびノッチ型に分類される640, 641).ただし,心電図のlow- pass filter の設定でER の有無そしてスラー型あるいはノッ チ型の判定も変動することに注意が必要である642).ER に続くST 上昇の有無は問わない.ST 部分は上昇型,水平型,下降型に分類されることもある296, 640)(図28).またER を認めない誘導におけるQRS 幅は,一般に120 ms 未満と定義されている641). 4.3 ER の変動要因 これまでにERS の確定診断に有用な負荷試験の報告はない.ただしJ 波を増強あるいは減弱させる因子・薬剤はいくつか報告されている. ERS を疑う場合には,日内および日差変動を考慮した繰り返しの心電図検査が有用と考えられる643-645).心イベントが安静・夜間時に比較的多いことから643-646),ホルター心電図などを用いて自律神経活動とJ 波との関係を評価することも考慮される.また,発熱時にJ 波が増強したとする報告もある636).IVF 症例で,J 波と自律神経との関連について心室遅延電位を用いて評価した研究では,J 波を有する症例で心室遅延電位陽性率が高いことが報告されている647). 他にJ 波の振幅にかかわる要因として心拍変動がある.多くの場合J 波形成にIto が関与すると想定されており,再分極相に機能するIto チャネルは不活性化からの回復が遅いため648),J 波は低心拍時に増高し,高心拍時に減高する649, 650).一方で,非Ito 性のJ 波では,高心拍時に増高 スラー型 II IIIノッチ型上昇型水平型下降型 II III 図28 ER 波形の分類A:J 波,B:ST 部分A B 表16 ERS の原因遺伝子,蛋白,イオンチャネルへの影響 遺伝子蛋白イオンチャネルへの 影響 K チャネルKCND3 Kv4.3 Ito 増加Na チャネルSCN5A Nav1.5 INa 減少(Watanabe H, et al. 2011 334),Takayama K, et al. 2019 634)を参考に作成)