GL検索 v0.1.0
画像は 58 ページを描画したものです
page 58

p.58 抽出テキスト

ントは機能獲得型である74).外向きのカリウム電流が増加し,再分極が促進され活動電位持続時間が短縮し,心電図上はQT 短縮を呈する.その結果,有効不応期が短縮するとともに,貫壁性再分極の不均一性が生じてリエントリー回路が形成され,AF やVT/VF の基質となる594).KCNQ1バリアントを原因とするSQTS の中でもp.V141M は,胎児期から高頻度に徐脈を呈し,ペースメーカ植込みを必要とする症例が多いなど,多様な表現型を呈すること報告されている595).

SLC4A3 は2017 年にはじめて報告された比較的新しいSQTS の原因遺伝子である596).SLC4A3 は細胞膜上に発現し,Cl-/HCO3-を交換するアニオン交換輸送体3(AE3)をコードする.SQTS の原因となるバリアント(p.R370H)はHCO3-の細胞外への汲み出しが障害されており,細胞内pH の上昇をきたし,AE3 をノックダウンしたゼブラフィッシュではQT 時間短縮が確認されている596).ただし, AE3 の機能低下による細胞内pH 上昇がQT 短縮をきたす機序は解明されていない.

SQTS と診断された患者およびその家族に対する遺伝学的検査については,推奨表15 に示すように,ClinGen でdefinitive ~moderate と評価された4 遺伝子について推奨される.

4 診断

4.1 臨床症状

KCNQ1p.V141M バリアントでは,他のSQTS 例と異なり,QT 短縮に加えてAF やVF など多様な表現型を呈するとされている.多形性VT やVF により失神,心停止,突然死をきたし,初発症状が心停止のこともある588, 597). AF の合併は多く588, 597),これにともなう動悸を訴える症例もある.胎児徐脈で診断されAF を合併する家系に, SQT2 の原因であるKCNQ1 p.V141M が同定された報告

がある598, 599).また家族内検索や検診で偶然診断される無症候例も存在する.心イベントは安静時または就寝中に多いが,労作時の発症例も報告されている588, 597).症状の初発は思春期以降から40 歳代の男性に多いものの,1 歳未満での発症も報告されており,注意を要する588, 597).

4.2 心電図診断・負荷試験

QTc 短縮は診断においてもっとも重要な所見であるが,健常者とのオーバーラップが存在する.成人ではQTc <330 ms となることは非常にまれであるが582, 585, 600, 601),小児期・思春期ではQTc 短縮を示す症例が多い586, 587).とくに思春期男性に多く,高校1 年生男性では600 人に1 人がQTc<330 ms を示したとの報告がある586).また特徴的なT 波形を呈することがあり,診断の補助になるとともに,遺伝型と表現型との関連が示唆されている582, 602-604).ERの合併が多く,診断の参考になるとの報告もあるが587, 605),思春期・若年男性では健常者でもER の有病率が高いため,有用性は限定的と考えられる587, 605).運動負荷試験やホルター心電図でのQT 間隔は常に短縮しており,正常に比し心拍数変化にともなうQT 間隔の変化が乏しいのが特徴である606).ホルター心電図はAF の合併評価にも有用である.若年者ではILR によるVT/VF の評価も検討される.診断を目的とした薬剤負荷試験の報告はなく,EPS の有用性も限定的で,推奨されない.

4.3 鑑別診断

QT 間隔が短縮する他の原因として,高K+血症,高Ca2+血症,高体温,アシドーシス,自律神経機能障害,ジギタリスやカテコラミンなどの薬剤使用,カルニチン欠乏などがあり,これらを除外する必要がある607).

表13 SQTS の原因遺伝子

遺伝子蛋白機能変化ClinGen 評価KCNH2 Kv11.1 IKr 増加確実KCNQ1 Kv7.1 IKs 増加強いKCNJ2 Kir2.1 IK1 増加中等度SLC4A3 AE3細胞内pH 上昇中等度(Walsh R, et al. 2022 536)を参考に作表)推奨表15  SQTS における遺伝学的検査の推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

SQTS の診断基準を満たす患者に対し,遺伝学的検査(KCNH2,KCNQ1, SLC4A3)を行う. I C SQTS の診断基準を満たす患者に対し,遺伝学的検査(KCNJ2)を考慮する. IIa C SQTS と診断された発端者の家族に対して,発端者で同定された原因遺伝子バリアントを対象とした遺伝学的検査を行う. I C