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p.57 抽出テキスト

第5章 QT短縮症候群(SQTS)

1 概論

先天性SQTS は,心電図におけるQT 時間短縮(図26)と合併するVF による失神・突然死を特徴とする疾患であり,AF を高率に合併する.若年性AF 症例と原因不明の失神・突然死を呈した症例の心電図において,著明なQT時間短縮(≦280 ms)を認めたことが2000 年にはじめて報告された581).それ以降,VF による心臓突然死をきたす疾患として疾患概念が確立された.現在では,QTc ≦320 ms の場合,またはQTc ≦360 ms で他の関連した所見が認められる場合に診断される3).VT/VF 発症のリスクが高い予後不良の疾患であるため,早期診断・早期介入が重要である3).

2 疫学

SQTS はきわめてまれな疾患であり,有病率は,成人で

0.02 ~0.1% 3, 581-583),小児で0.05% と報告されている584).

日本人集団でも同程度の有病率が報告されている585).学校心臓検診においては,QT <330 ms のSQTS 診断基準を満たす割合は0.1 ~1.3% と,有病率を上回っており586, 587),心電図所見のみで真のSQTS を鑑別することは困難である可能性が示唆されている.性差についてはLQTS と対照的に,SQTS では男性の方が高い588).

SQTS の家族歴は,小児患者の32% と成人患者の44%に認められる588, 589).SQTS では心停止が初発症状となる割合が高く(28%) 590),無症状であっても心電図所見や家族歴などからSQTS が疑われる場合は注意を要する591). SQTS 患者の7 ~9 割は男性であり588, 590),テストステロンの血中濃度やX 染色体上の何らかの遺伝子がこの男性優位な傾向をもたらしている可能性が示唆されている592).

SQTS における心停止のリスクは高く,40 歳までに41%の人が心停止を生じると報告されている588).またSQTS

では男性の有病率が高いものの,性別による予後の差は認められていない588).治療に関しては,キニジン内服による予後改善効果が示されている593).

3 遺伝的背景・病態生理

SQTS は常染色体顕性(優性)遺伝性疾患をとり,これまでに複数の原因遺伝子が報告されているが,2021 年のClinGen による再評価が行われ,KCNH2,KCNQ1, KCNJ2,SLC4A3 の4 つがSQTS の原因遺伝子として確立された(表13) 536).ただ症例数が少ないため,遺伝型によるリスク層別化は報告されていない.

KCNH2,KCNQ1 はそれぞれLQT2 およびLQT1 の原因遺伝子であり,KCNJ2 はLQTS 亜型であるATS(LQT7)の原因遺伝子である.これらはいずれもK チャネルをコードする遺伝子である.ただLQTS の原因となるバリアントが機能喪失型であるのに対し,SQTS の原因となるバリア

I

II

III

aVR

aVL

aVF V1

V2

V3

V4

V5 V6

図26 SQTS の心電図(QTc 280 ms)