p.49 抽出テキスト
第4章 カテコラミン誘発多形性心室頻拍 (CPVT) 1 概論 CPVT は,運動や興奮を契機としてVT やVF を発症し,若年者の失神発作や突然死の原因となる疾患である510-513).安静時心電図は軽度徐脈を呈する程度でほぼ正常であるため,通常の健康診断などで無症状のCPVT 患者を診断することは困難である.CPVT は,器質的心疾患や安静時心電図に異常所見を認めず,運動もしくはカテコラミンが分泌されるような状況により,他に原因が考えられない二方向性VT(図21)や,多形性PVC/VT が生じる40 歳未満の患者において臨床診断される.CPVT 患者の60 ~70%に病的バリアントが同定され,心筋リアノジン受容体(RyR2)をコードするRYR2 が主要な原因遺伝子である.その他CASQ2,CALM1~3,TRDN,TECRL などが原因遺伝子として報告されている.原因不明の若年性心臓突然死の一部は,CPVT が原因である可能性がある514). 2 疫学 CPVT は比較的まれな疾患で,有病率は10,000 人に1人程度と考えられている.ただし,安静時心電図での診断は困難で,若年性心臓突然死症例にCPVT が含まれている可能性もあることから,正確な有病率は不明である2).3歳頃から症状を呈することがあり,好発年齢は10 歳前後であるが,乳幼児での発症はまれである515).若年時には診断されず,30 代以降に診断が確定する症例もある516). 2010 年代までの報告では女性が多い傾向があったが516- 518),最近の報告では性差はない515, 519, 520).CPVT は遺伝性疾患であるが,新規突然変異による発症が多く521),まれに常染色体潜性(劣性)遺伝形式で発症することもあるため74),家族歴がない場合も多い. CPVT と診断された症例のうち60 ~70% が失神や心停止などの心イベントを経験し,有症候例の30 ~40% が 20 歳未満で初回の心イベントを経験している515, 516, 518).なお,20 歳未満の症例で検討された平均発症年齢は10 歳前後であった515, 522).また初回の心イベントが心停止あるいは突然死であった症例は20% 程度と非常に高率であった515, 518, 522).乳幼児突然死症候群の症例にCPVT の原因遺伝子であるRYR2 の病的バリアントを認めた報告はあるが523, 524),CPVT に特徴的な心電図の記録はなく,CPVTによる突然死かどうかは不明である. 3 遺伝的背景・病態生理 CPVT は常染色体顕性(優性)遺伝形式または常染色体 図21 運動負荷時に記録された二方向性VT起源の異なるPVC(↓)が規則的に繰り返されている V1 V2 V3 V4 V5 V6 I II III aVR aVL aVF