p.46 抽出テキスト
刺激以下でVF が誘発される場合に,推奨クラスIIb のICD 適応とした.「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年度改訂版)」1)では,原因不明の失神例においてEPS でのVF誘発性を参考にICD の適応を決めているが,国内7 施設の後ろ向き研究において,EPS の妥当性に関しては,ガイドラインにしたがって適切なリスク層別化が可能となっていることが報告されている291).一方で,2016 年のAPHRS/EHRA/HRS/ ラテンアメリカ心臓刺激・電気生理学会(SOLAECE)合同会議397),2022 年版ESC ガイドライン3)では,原因不明の失神例に対してはILR 植込みを推奨している. 近年,原因不明の失神歴を有するBrS 症例におけるILRの有用性が報告されており230-232),BruLoop 研究では18施設370 例のILR が植込まれたBrS 症例において,心室不整脈は7% の患者にのみ検出された.心房不整脈や徐脈性不整脈が高率に検出され,ILR により原因不明の失神例において適切なマネージメントが可能となることが報告されている230).このため,本ガイドラインでは,原因不明の失神を有する例では,EPS にて2 連心室刺激以下でVF が誘発される場合にICD 植込みを推奨クラスIIa に加え,失神の原因検索の目的でのILR 植込みを推奨クラスIIa とした. わが国では2016 年から,S-ICD が使用可能となっている.わが国の循環器疾患診療実態調査(JROAD)を元にした研究では,BrS において年々S-ICD の使用率が上昇しており,2019 年にはICD 植込みが行われたBrS 症例のうち,77% にS-ICD が選択されていた488).BrS において, TV-ICD とS-ICD の有効性,安全性を直接比較した前向きRCT は存在しないため,両者の比較は困難であるが,多施設研究によるS-ICD の植込み後のBrS 症例の前向き研究では,既報のTV-ICD の報告より不適切作動やデバイス関連合併症発生率が低かったことが報告されている489, 490).ペーシングの必要がないBrS では,リードに関連する合併症の低減が期待できるS-ICD は第1 選択になりうる.しかしながら,BrS では心電図波形の日内・日差変動をしばしば認め,S-ICD の心電図スクリーニングテストが運動や薬剤負荷により不適合となる症例が比較的多いことが報告されている491-495).S-ICD を選択する際にはT波オーバーセンシングによる不適切作動を避けるためにも慎重な心電図スクリーニングが求められる192, 496).また, SCN5A 陽性例では徐脈性不整脈を合併することがあり,ペーシングを要する場合は,TV-ICD が考慮される. 2025 年よりシングルチャンバ型血管外ICD システム(EV-ICD)が保険適用となり,BrS 症例に対する植込みも行われるようになった.BrS 症例でのEV-ICD の不適切作 動率・合併症率については今後の症例の蓄積が必要である. 6.4 カテーテルアブレーション(推奨表10) ICD 頻回作動をともなうBrS において,VF の契機となるPVC に対する心内膜アブレーション法と右室流出路の異常電位部位に対する心外膜アブレーション法が報告されている234, 497).右室流出路心外膜側の異常電位に対する高周波カテーテルアブレーションが,ブルガダ型心電図波形を正常化し,術後のVF 誘発性と長期的なVF 再発を抑制することに関してはすでに多数の報告がある498-500). BRAVO レジストリでは159 人のVF 既往のあるBrS に対する心外膜アブレーション成績を報告し,約4 年のフォローアップ期間中に単回のアブレーション後のVF 非再発率は81% で,再アブレーション後の最終成功率は96% であった237).とくに,アブレーション後に薬剤負荷試験を行いタイプ1 心電図が出現しない例では,5 年のVF 非発生生存率が98% と非常に良好な結果であった. また,洞調律時の右室流出路心外膜側の異常電位を指標とするのみならず,Na チャネル遮断薬により拡大した異常電位部位を含むアブレーションや,右室流出路自由壁以外の右室下壁や左室側壁に存在する異常電位を指標としたアブレーションの有効性が報告されている501-503). 心外膜アブレーションの長期成績については不明な点も多く,失神例や無症候例に対する心外膜アブレーションの有効性に関するデータは乏しいため,現時点では,心室不整脈が確認されていない失神例や無症候例に対するアブレーションは原則として推奨されない.VF・心停止例は原則ICD 植込みが必須であるが,ICD 拒否・不適応例で,少数ながら心外膜アブレーションの有効性が報告されている504, 505).さらに,2025 年に報告された高リスクBrS 症例を対象とした2 つの無作為化比較試験(RCT)においても,心外膜アブレーションはVF 発生率を有意に抑制することが報告されている506, 507).「2024 年JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデー 推奨表10 BrS のVF に対するカテーテルアブレーション の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル VF に対するICD 頻回作動をともない,薬物治療が無効または副作用のため使用できないBrS に対し,心内膜もしくは心外膜アブレーション施行を考慮する. IIa B