p.41 抽出テキスト
多遺伝子リスクスコアとして疾患発症や予後を予測することが期待される253, 340, 347). 4.2 病態生理 BrS における心電図およびVF の発生機序として「再分極異常説」と「脱分極異常説」が提唱されている74, 341, 348-350).カテーテル治療時の心外膜マッピングでは脱分極異常を示唆する所見が多く報告されているが25, 234, 351, 352),再分極異常353-356)とされる所見もあり,両者が混在している可能性もある357, 358). 1 再分極異常説:心筋細胞の活動電位は内向き電流(INa やICaL)と外向き電流(Ito,IKr,IKs)により形成されるが359, 360),BrS で同定される遺伝子バリアントは,内向き電流の減少または外向き電流の増加をきたすことで心外膜側活動電位波形が変化する320, 361).心筋層内におけるチャネル発現量の差により心内膜・心外膜側活動電位の変化が不均一となり,心電図上特徴的なST-T 変化を形成する.さらに,心外膜層内の活動電位のばらつきにより機能的リエントリー(phase 2 reentry)が発生する270, 348, 361-363).BrS における性差も,心筋細胞におけるチャネル発現量の性差270)や性ホルモンの影響にもとづくと考えられる271, 364-366). 2 脱分極異常説:活動電位の開始にかかわるINa の減少や 器質的変化25, 324, 367, 368)などにより右室流出路の心外膜下心筋層に伝導遅延が存在することで,右室内・心筋層内に電位勾配を生じ,心電図変化およびPVC の発生からVF へ移行する233, 349, 361).BrS 症例では右心室心外膜側の線維化やCx43 の減少が報告されており25),加算平均心電図における遅延電位369)やQRS 棘波370)は脱分極異常を支持する所見である.右室流出路心外膜に認められる異常電位はさまざまな形態を呈し371),脱分極異常とともに再分極異常を観察している可能性も報告されている234, 237, 370, 372). 5 リスク層別化 BrS ではさまざまな予後予測指標が報告されている373).しかし,単独の一因子のみで高リスク例を同定することは困難であり,研究によっては一致しない指標も多く,わが国と欧米,あるいは症状ごとで危険因子が異なる可能性がある.最近では複数の危険因子を組み合わせて評価する報告が多くなっているが247-249, 288, 290-292, 294, 374-390),否定的な報告もある250).以下,VF イベントと関連しているとされる 因子を述べる. 5.1 危険因子・リスク評価法 5.1.1 年齢・家族歴 BrS の心イベントは,小児例には少ないが,20 ~40 歳代をピークとし,その後は加齢とともに減少し230),70 歳を超えると初発発作のリスクは低い263, 391).一般に女性は男性よりもリスクが低い(5.3 他のサブグループ参照). 突然死の家族歴は予後と関連しないとする報告が多いが247, 260, 265, 375),Kamakura らは45 歳未満の突然死家族歴でHR 3.3 264),Sieira らは35 歳未満の家族の突然死でHR 2.9 247)と報告している.また,アジアからのメタ解析でも,若年での突然死や複数の突然死がある場合は注意すべきであるとされている392).本ガイドラインでは,若年の突然死の定義として動脈硬化性疾患による突然死の状況も考慮し,40 歳以下の突然死とする. 5.1.2 心臓電気生理検査 心室プログラム刺激によるVF の誘発を用いたリスク評価の有用性は長らく議論されてきたが265, 267-269, 273, 393-396),近年ではメタ解析や長期経過観察データなどで有効性が示されるようになった243, 244, 303).現時点では,プログラム刺激(2 連心室期外刺激以下)で,停止に除細動を要するVF が誘発された場合,ICD 植込みが考慮される206, 243, 303, 381, 397).最短刺激間隔は200 ms とするものが多い265, 273, 290, 381).ただし,VF 誘発の陽性的中率は高くなく,陰性的中率が高いため282, 293, 295, 375),原因不明の失神や突然死の家族歴がある症例,無症候例で高リスクと判定された症例に行うべきである. プログラム刺激の有用性は無症候例244, 290),失神例282, 293),薬剤誘発性タイプ1(無症候性例) 246),一次予防例230, 243, 375, 381)で報告されているが,失神歴のある薬剤誘発性タイプ1例246, 295)や女性398)では否定的な報告もみられる.誘発以外の指標としては,右室不応期短縮(<200 ms) 273),右室内不応期のばらつき(>60 ms) 399),心外膜異常電位領域面積355, 400)が報告されている. 5.1.3 SCN5A 病的バリアント 心臓Na チャネル遺伝子をコードするSCN5A の病的バリアントを保持しているとVF リスクが高く(HR 2.0 ~ 2.22) 240-242, 322, 400, 401),再発も多い249, 322, 400, 402).・高リスクバリアント:機能喪失型SCN5A バリアント241,