p.38 抽出テキスト
3.2.1 薬物負荷試験方法 無症候例でBrS が疑われるが,非タイプ1 の心電図のみが認められる場合,Na チャネル遮断薬負荷試験でタイプ1に変化しても,致死性不整脈イベントのリスクは低い.このため健診・検診で偶発的にみつかった例では施行する必要はない.ただし,1失神・心停止既往,2BrS の家族歴,3突然死家族歴があり,発作状況などからBrS が疑われる際には考慮すべき検査といえる.非タイプ1 波形例ではこの1~3がある場合に薬物負荷試験を考慮する. Na チャネル遮断薬負荷試験は,負荷によりタイプ1 心電図を顕在化させるために行う305)(図15).薬物の入手性から,わが国では通常ピルジカイニド(1 mg/kg を10 分で静注) 306)が用いられる.その他,フレカイニド(2 mg/ kg を10 分で静注),プロカインアミド(10 mg/kg を10 分で静注) 307)などが使用可能であるが308, 309),欧州でおもに使用されるアジマリンはわが国では入手できない. 薬物負荷中に致死性不整脈が引き起こされることがあるため310),心電図モニター,除細動器,VF ストームになった際に有効なイソプレテレノール311)などを準備し,可能なら入院にて行うことが望ましい.薬物負荷開始後はタイプ1 波形の出現,心室不整脈・洞停止・高度房室ブロックの 出現,QRS 幅の30% を超える延長がある場合は終了とする312).一方,すでに自然発生タイプ1 がみられた場合,薬物負荷に診断的意義はないが,リスク評価に用いることができる可能性はある.ただし,重症不整脈発症リスクが高く,アジマリンが使用される欧州では推奨クラスIII とされている検査であり,ピルジカイニド負荷施行に際しては必要性を十分に検討し,危険性を十分に考慮すべきである3, 285). 3.2.2 運動負荷試験 トレッドミル負荷試験の回復期にコブド型ST 上昇の顕在化・増悪が報告されており,リスク評価の手段として使用できる可能性がある303, 313).運動負荷後のV6 誘導におけるQRS 延長もBrS で特徴的に認められるため,診断の一助となる314). 3.2.3 遺伝学的検査 現在までに20 以上のBrS と関連する遺伝子が報告されているが,診断学的意義を有するものはSCN5A のみである239).一方,SCN5A バリアントの保有のみでBrS と診断 図14 BrS の診断フローチャート 自然タイプ 1 波形(通常〜上位肋間記録,日内変動含む)非タイプ 1 波形 下記状況でのタイプ1 波形の出現(通常〜上位肋間,日内変動含む) 発熱時運動負荷回復期 運動負荷以外の心電図で タイプ1 波形の確認 薬物負荷試験ピルジカイニド 1 mg/Kg/10 分で静注 タイプ1 波形の出現 BrS と診断 BrS 疑い 以下の所見を有する場合に薬物負荷施行を考慮する 1 心室不整脈の確認2 不整脈性失神3 BrS の家族歴4 若年かつ濃厚な突然死家族歴5SCN5A 病的バリアント