p.36 抽出テキスト
2 疫学 2.1 有病率 BrS は東アジアで有病率が高く,タイプ1 心電図(コブド型,3. 診断を参照)の有所見率は,欧米の成人では 0.02 ~0.15% であるのに対し254-256),わが国の成人では 0.1~0.3% と報告されている7-9, 257, 258).サドルバック型ST上昇の有所見率はさらに高く,40 歳以上(平均年齢58 歳)の集団では,右脚ブロックで0.1 mV 以上のST 上昇を呈する例は全体で0.7%,男性で2.14% と報告されている7).東アジア人における有病率がもっとも高く,白人はその約1/10 であり,ヒスパニックやアフリカ系人種はさらに低い259). 2.2 年齢,性差,家族歴 BrS の発症率は小児期に低く,20 ~40 歳代をピークに加齢とともに低下する8, 260).日本人学童での有所見率は 0.005 ~0.0098% と報告されている261, 262).VF 発生率も 同様に30 ~40 歳代をピークとし,加齢とともに低下し, 70 歳以上でのVF 発症はまれである260, 263). 家系例を多く含む欧米の研究では,男性が全体の7 ~8割を占めるが,主として発端者を集積したわが国の報告では,男性が95% を占める264-269).BrS が男性に多い理由として,男性では右室心外膜側心筋のイオンチャネルの分布 様式により,SCN5A などの病的バリアントや種々の外的要因によるイオン電流の影響を受けやすいことがあげられる270).また,BrS では血中テストステロン値が有意に高く,肥満指数が低いことも報告されている271). 突然死の家族歴を有する症例について,45 歳未満の突然死の家族歴は,わが国の循環器委託研究では15% 264),欧州のレジストリであるFINGER 研究では26% と報告されている265).突然死の年齢や親等にかかわらない突然死の家族歴は,20 ~55% と報告されている264-269, 272).海外のレジストリでは家系例を含めているものが多く,わが国より突然死の家族歴が高く報告されている. 2.3 予後 わが国のBrS の予後に関し,厚生労働省の循環器病委託研究(図12A,B) 264)によると,2001 ~2007 年におけるわが国26 施設のタイプ1 心電図を有する発端者245人のフォローアップ期間(平均48.7 ± 15.0 ヵ月)の心イベント発生率は,VF 既往例10.2% /年,失神既往例0.6% /年,無症候で0.5% /年であった.Takagi らの報告(図12C) 272)では,タイプ1 心電図を有する460 人のフォローアップ期間(平均50 ± 32 ヵ月)の心イベント発生率は,VF 既往群8.4% /年,失神既往群1.7% /年,無症候で0.3% /年で,循環器委託研究とほぼ同等であった.この結果は,欧州のレジストリであるFINGER 研究ともほぼ一致している(VF 既往群7.7% /年,失神既往群1.9% /年,無症候群0.5% /年) (図13) 243, 245, 246, 264, 265, 269, 272-295). 図12 BrS の予後A:タイプ1 例,B:非タイプ1 例,C:症状別予後(タイプ1,非タイプ1 含む) (A,B:Kamakura S, et al. 2009 264),C:Takagi M, et al. 2013 272)より) A, B:© 2009 American Heart Association, Inc., C: © 2013 Heart Rhythm Society, with permission from Elsevier. A B C無症候群無症候群無症候群 失神群失神群失神群 VF 群 VF 群VF 群 P<0.0001 P=0.009 Log rank 検定P<0.0001 累積心イベント回避率1 0.8 0.6 0.4 0.2 0累積心イベント回避率1 0.8 0.6 0.4 0.2 0累積心イベント回避率1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 10 20 30 40 50 60 70(月) 観察期間 0 10 20 30 40 50 60 70(月) 観察期間観察期間 0 20 60 40 80 100 120(月) 患者数無症候群154 152 142 123 113 90 48失神群46 45 42 35 33 26 10 VF 群45 40 31 27 25 23 13患者数無症候群53 53 52 43 40 29 16失神群21 21 20 19 16 13 7 VF 群11 11 11 7 6 3 2患者数無症候群 267 228 141 87 60 24 1失神群109 92 60 43 26 18 2 VF 群84 61 38 26 15 14 2