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8.3 生活指導

小児に対しても成人同様に遺伝型にもとづく対応が必要である.LQT1 では激しい運動,水泳,マラソンは避け, LQT2 では目覚まし時計など突然の音刺激を避けるように指導する.ただし,運動は小児の発育発達に不可欠であり,医師は学校生活管理指導票などを用いて,許容される運動強度を示す必要がある199).LQTS 患児において,安全に過ごすために運動制限が必要となることはあるが,必要以上の運動制限も避けるべきである.「2025 年JCS/JSPCCSガイドラインフォーカスアップデート版学校心臓検診」126)を参考にし,shared decision making のうえで運動強度,管理区分を決定する[7.2.1 生活指導(運動制限),表6,図8 参照].運動以外のレクリエーションとして,電子ゲームは比較的安全と認識されていたが,ゲーム中に致死性不整脈を発症した例がある205).ゲームによる情動ストレスが誘因となっていると想定されているが,ゲームの可否に関する指導は慎重を要する.

8.4 薬物治療

小児における独自の薬物治療基準は確立されておらず,基本的には成人の治療基準に準ずる.いずれの遺伝型でも非選択性のβ遮断薬が中心に用いられ,無症状でもQTcが470 ms 以上あれば,LQT3 を除き,β遮断薬投与は推奨クラスI の適応とされる(LQT3 は推奨クラスIIa) 2, 124, 125, 206).LQT3 ではおもにメキシレチンを使用する(7.2.2 薬物治療参照).ただし,わが国においては学校心臓検診で抽出される小児例が多く,それ以外で抽出された症例とはその後の不整脈イベントの経過が異なる201).学校心臓検診で抽出された,無症状でQT 間隔が比較的短く,突然死の家族歴もない症例の場合,成人と同じ基準に沿っての投薬の是非については,今後も検討が必要である.リスク層別化においては,6.7 リスク層別化を参考にされたい.

8.5 非薬物治療

胎児・新生児期発症の重症型LQTS は,徐脈やpauseがTdP の契機となることが多く,β遮断薬を中心とした薬物治療を進めるためにも,ペースメーカが必要な場合がある207, 208).また年長症例に対して,ペーシング+β遮断薬によってQT 短縮と心イベント抑制効果が期待される209).

小児のICD 治療は成人に比して,リード合併症,血管閉塞,リード抜去時の合併症が多いため210),適切なリスク評価と植込み方法の検討が求められる.LQTS における突

然死予防のICD 治療の立ち位置は,LCSD の可否によって異なってくる.欧米においては,一部の症例ではLSCDが2 次予防においてICD の代替治療となるとされているが208),わが国においてLSCD は保険適用外であり,実施できる施設は限られる.経静脈リードICD が難しい場合, S-ICD(またはEV-ICD)をある程度の年齢まで使用する方法もある193).

9 二次性/ 後天性QT 延長症候群

9.1 疾患概念

平常時にはQT 間隔の延長が認められないが,薬剤,電解質異常,徐脈性不整脈,摂食障害など,多くは二次的(後天的)な影響でQT 間隔が延長してTdP をきたし,失神または突然死の原因となる疾患である.日常診療では,先天性LQTS よりも高い確率で遭遇する.原因としてもっとも多いのは薬剤であり,キニジン(TdP 発症率は約8%) 211)は古くから失神をきたすと知られていた212).抗不整脈薬以外にも抗生剤や抗アレルギー薬,向精神薬,抗がん剤など多岐にわたり,報告例も増加している213-215)(表7,図10,付表3).CredibleMeds 216)にはTdP を引き起こす危険性がある薬剤の情報が掲載されている.

9.2 疫学

後天性LQTS の有病率は明らかではないが,ドイツでTdP 発生率は100 万人年あたり男性2.5 人,女性4.0 人という報告や217),カリフォルニア大学サンフランシスコ校の集中治療室などで2 ヵ月間治療を要した成人におけるTdPの発生率は0.06% で,心停止の6% はTdP が原因であるという報告もある218).さらに,背景となる後天性QT 延長の発生率は,TdP の発生率よりもはるかに高い可能性がある.

高齢者は,生体機能の低下にともない,洞機能,腎・肝代謝機能の低下が生じ,多剤服用もあいまって,とくに女性では後天性LQTS をきたしやすい.

9.3 診断・リスク評価

後天性LQTS は,1誘発因子に曝露後QT 延長が認め