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p.27 抽出テキスト

長するので,できるだけ血清K+値≧4.0 mEq/L を目標に是正する.

7.2 予防的治療

先天性LQTS の心イベント(致死性不整脈)に対する予防的治療として,生活指導,薬物治療,非薬物治療がある.どの治療を選択するかは患者ごとのリスクの程度に応じて検討される(6.7 リスク層別化の項参照).

7.2.1 生活指導(運動制限)

先天性LQTS 患者では生活指導が重要である.先天性LQTS の全患者に,QT 延長作用を有する薬物(マクロライド系抗生剤など,9. 二次性/ 後天性QT 延長症候群,表7,付表3 参照)の服用を避けるため,医療機関を受診する際はかならず病名を申告するように指導する.また低K+血症をきたすような無理なダイエットは禁止する.LQT2では目覚まし時計や電話などの突然の音刺激を避けるように指導する.

運動や競技スポーツ参加の許可に関する明確な基準はないが,学校における生活や運動可否については「2025 年JCS/JSPCCS ガイドラインフォーカスアップデート版学校心臓検診」126)を参照されたい.一般的に高リスク例や運動中に失神発作を起こした例では,激しい運動や競技スポーツは避けるべきで,とくにLQT1 では運動や水泳などで心イベントが多い89)ことから,より積極的な運動制限が必要である125).

しかし近年,遺伝型にかかわらず適切な予防的治療がなされれば,たとえ運動強度の高い競技スポーツでも致死性心イベントの発生率は増加しないことが米国から相次いで報告された171-173).そこで2024 年HRS エキスパートコンセンサスステートメントでは,LQTS 患者の運動や競技スポーツへの参加を一様に禁忌とするのではなく,医療者側と患者本人(未成年者の場合は保護者も含め)がリスクを共有し,また服薬遵守,運動中の適切な水分・電解質補給,運動中には(可能であれば患者本人用の)AED の準備,心肺蘇生の講習を受けたスタッフの監視下で行う,などの条件を共有したうえで,shared decision making を行えば,運動や競技スポーツへの参加を許可できるのではないかと述べている174).

日米で人種,社会制度,治療内容(β遮断薬内服率やICD 植込み率)などが異なり,本内容がただちにわが国のLQTS 患者の運動制限緩和に直結するとはいえないが,少なくともshared decision making という考え方は,今後のLQTS 患者の競技スポーツ参加に大いに参考となりうる.上記をもとに,本ガイドラインでは,先天性LQTS 患者の

運動または競技スポーツ参加の目安を表6,図8 に示す.

7.2.2 薬物治療

a. β遮断薬

β遮断薬はLQT1 とLQT2 の初回心イベントをそれぞれ74% 83),63% 84)抑制し,致死性心イベントもそれぞれ70%,53% 抑制すること175)が示されており,ほとんどの先天性LQTS で第一選択薬である.β遮断薬の内服は失神の既往やVT・VF を認めた症例では有用であり(推奨クラスI),無症状でもQTc ≧470 ms(LQT3 は除く)の場合は有用(推奨クラスI),無症状かつQTc <470 ms でも有用である可能性が高い(推奨クラスIIa)

125).LQT3 では,

国際多施設登録研究において,女性患者でβ遮断薬の有効性が認められたが84),その後の報告では有効性は示されなかった176).そこで本ガイドラインでは,無症状のLQT3では,QTc ≧470 ms で推奨クラスIIa,またQTc <470 ms では推奨クラスIIb とした(推奨表3).

さらにβ遮断薬の中でも,β1 選択性の高いメトプロロール,アテノロールと比べ,β1 非選択性のナドロール,プロプラノロールの方が有効性が高い177, 178).とくにLQT2 ではナドロールが推奨される178).また,アドレナリン誘発性の失神歴を有するLQT1 では,致死性心イベント抑制効果

推奨表3  先天性LQTS に対するβ遮断薬の推奨と

エビデンスレベル

推奨

クラスエビデンス

レベル

失神の既往やVT/VF を認めた症例に対し, β遮断薬を投与する. I B QTc ≧470 ms の無症候例(LQT3 は除く)に対し,β遮断薬を投与する. I B QTc <470 ms の無症候例のうち, LQT1,LQT2 の症例* に対しβ遮断薬投与を考慮する. IIa B QTc ≧470 ms の無症候例LQT3 に対し, β遮断薬投与を考慮する. IIa C QTc <470 ms で,失神の既往やVT/VFはないが心室不整脈による症状を有するLQT7 症例に対し,β遮断薬投与を考慮する. IIa C QTc <470 ms の無症候例のうち, LQT3,遺伝学的検査陰性または未検査の症例に対し,β遮断薬投与を考慮してもよい. IIb C *LQT2 または重症LQT1 に対しては,非選択性β遮断薬(ナドロールまたはプロプラノロール)が推奨される.