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p.26 抽出テキスト

6.6 遺伝学的背景

先天性LQTS(RWS)のなかで,LQT2 とLQT3 はLQT1 と比べ不整脈リスクが高い36, 146).さらに同じ遺伝型でも,バリアントの部位,タイプ,機能異常の程度によってリスクに違いがある.

LQT1 では,KCNQ1 の膜貫通領域バリアント,ミスセンスバリアント,またdominant negative effect を示すバリアントの症例は,QT 間隔が長く,心イベント発生率が高いと報告されている83, 156).さらに近年,KCNQ1 のバリアントでもとくにA341V 変異の重症度がきわめて高く,次にA341V 周辺のチャネル孔(pore)にあたるS6 領域の変異が重症と報告されている157).一方で,比較的予後が良好とされるC 末端領域であっても,重篤な表現型をきたすミスセンスバリアントが存在する158).

KCNQ1(ときにKCNE1)バリアントの潜性(劣性)遺伝形式を原因とし,QT 延長に感音性難聴を合併するJLNSでは,一般にQT 間隔も長く高リスク例が多い153).

LQT2 でもKCNH2 の膜貫通孔領域のミスセンスバリアント例は重症といわれる84).さらに近年dominant negative effect を示すミスセンスバリアント例は,非ミスセンスバリアントまたはハプロ不全ミスセンスバリアント例と比較して,QTc が長く,心イベントのリスクが高いと報告された159).

LQT3 では,バリアントの部位と予後については十分解明されていないが,SCN5A のミスセンスバリアントのなかでも,V411M 160, 161)やΔ KPQ バリアント162)を有する例は高リスクであることが報告されている.逆にE1784K やD1790G 例は比較的予後良好とされる85).いずれにせよ,バリアントの局在のみで病原性を判断することは容易ではなく,個々のバリアントごとのリスク評価が重要である.

LQT1 ~3 以外の遺伝型については,バリアントごとの重症度評価は未確定である.しかしながらCALM-LQTSの予後はきわめて不良であり46),これまでの報告では半数以上が10 歳までに致死性不整脈を発症している47).ATSは従来,比較的良性と考えられており163),わが国の最近の報告でも,心イベント発症率は1 年間あたり0.25% である164).一方,欧州からは、高い致死性心イベント発症率(7.9%/ 年)が報告されており102),治療薬による影響も考えられている. 6.7 リスク層別化

LQTS のリスク層別化にはさまざまな評価法が提唱されている.従来のLQTS スコア(Schwartz スコア)

1)はQT

間隔(QTc),症状,家族歴からスコアを算出し診断基準にもなる,もっとも基本的な評価法である.一方で同スコアには年齢・性別や遺伝子情報が加味されておらず,それらを総合的に層別化したピラミッドが提唱されている125, 150) (図7)

150).さらにPriori らはQTc と遺伝型(LQT1 ~3)を入力するだけで5 年間の致死性不整脈の発症リスクを算出する1-2-3 LQTS Risk Calculator を開発した146, 165, 166). 5% 以上のリスクの場合にはICD 植込みを提唱しているが, LQTS 患者リスクは治療や経過とともに変化する. Schwartz らはQTc,心停止の既往,治療後のイベント有無,ICD 植込み年齢から算出したM-FACT スコア167)が≧2 を継続している患者が高リスクであると報告している168).

7 治療(成人)

先天性LQTS の治療は,QT 延長にともなって生じる致死性不整脈(TdP やVF)発生時の急性期治療と,それらを予防するための非急性期治療(予防的治療)に分けられる.

7.1 急性期治療

TdP は自然停止する場合と持続してVF に移行する場合がある.自然停止する場合はめまい,ふらつきや失神発作として自覚されるが,自然停止せずVF に移行した場合はただちに心肺蘇生と電気的除細動が必要となる.TdP の停止と急性期の再発予防には,硫酸マグネシウムの静注(30 ~40 mg/kg,すなわち体重60 kg の成人で硫酸マグネシウム2 g を5 ~10 分間で静注し,さらに3 ~20 mg/分で持続点滴)が有効である124).β遮断薬(プロプラノロール,ランジオロール)の静注169)も有効であり,患者によっては抗不整脈薬(リドカインおよびメキシレチン)あるいはCa 拮抗薬(ベラパミル)

170)がTdP の抑制に有効なこ

ともある.

徐脈がQT 延長を増悪させTdP の発生を助長する場合には,一時的ペーシングあるいはイソプロテレノールで心拍数を増加させる124).また,低K+血症はTdP 発生を助