p.25 抽出テキスト
いる.遺伝型(LQT1 ~3)にかかわらずQTc ≧500 ms の例は高リスクとされる145).さらに,QTc が10 ms 増加するごとにリスクが15% 増加するとされ146),基本的にQTc が長いほど心イベントリスクは大きい.遺伝型ごとでは, LQT1 ではQTc >530 ms は<500 ms の3.25 倍83), LQT2 ではQTc >530 ms は<460 ms の3.33 倍84),心イベント発生率が高いと報告されている.LQT3 でもQTc ≧ 500 ms を示す例は心イベントリスクが高い85).逆に遺伝学的検査において遺伝型が陽性でも,QTc ≦460 ms の不顕性(潜在性)LQTS は比較的予後良好とされている146). 6.2 その他の心電図所見 徐脈が心イベントリスクに関連すると報告されている81).とくにLQT3 において徐脈時のリスク上昇が懸念される89).またTWA がTdP 発現の危険因子になることが報告されている147-149). 6.3 年齢・性別 LQT1,LQT2 いずれにおいても,13 歳以前では男性の心イベントリスクが高い.一方,13 歳以上になると女性のイベントリスクが高くなり,思春期を境に男女のイベントリスクが逆転するといわれる83, 84).QTc が500 ms 未満でも, LQT1 またはLQT2 の13 歳未満の男性,同13 歳以上の女性においては,中等度のリスクがある(図7) 150).LQT3 に ついては明らかな性差は認められていないが,年齢に依存して女性のリスクが高くなり,男性に比べ女性の方がβ遮断薬による心イベント低減効果が高い可能性が報告された85).このような年齢・性別によるリスクの違いは,性ホルモンの心筋再分極への影響と考えられている(前述).また,LQT2 においては,周産期(妊娠中,産後1 年)に心イベントリスクが高くなり93, 94),より慎重な経過観察が必要である(「第14 章 先天性LQTS,CPVT 女性患者の妊娠,出産,産褥期における注意点」を参照).逆に思春期後の男性に特化したLQTS リスク評価もある151). 6.4 家族歴 家族歴の聴取はLQTS の診断に不可欠である.しかし,突然死や心イベントの家族歴が心イベントの危険因子になるかどうかについては,一定の見解が得られていない. 6.5 心イベントの既往と初発年齢 心イベント(失神,心停止)既往例は非既往例に比べてその後の心イベントが有意に多く[ハザード比(HR)3.1] 81),近年の報告でも,LQTS 診断前の致死性不整脈イベントは,その後の心イベントの独立した予測因子と報告されている(HR 2.56) 146).心停止既往のある例では,β遮断薬を使用 していても再発のリスクが高く,治療開始後5 年以内の心イベント発生率が14% と報告されている152).また,十分な薬物治療を行っても失神やTdP を経験した患者では,重症不整脈イベントのリスクが有意に高く153, 154),ICD 治療が考慮される(後述). 初発心イベント発生平均年齢はLQT1,LQT2,LQT3の順に若い.LQT1 とLQT2 は心イベントとして失神が多いのに比して,LQT3 ではTdP・心停止・突然死などの致死的心イベントが多い150).早期心イベント発生も危険因子であり,1 歳未満で失神を起こす例はとくに重症で,治療抵抗性のことが多い153, 155). 先天性LQTS のリスク評価ピラミッド 高リスク 中リスク 低リスクQTc ≧500 ms LQT1 ~3 * QTc <500 ms LQT1:男性<13 歳,女性≧13 歳 LQT2:女性(年齢問わず) QTc <500 ms LQT1:男性≧13 歳,女性<13 歳LQT2:男性(年齢問わず)遺伝子変異を有するキャリア(潜在性症例) 図7 先天性LQTS における心イベントリスク繰り返し記録される安静時心電図にてQTc ≧500 ms は遺伝型にかかわらず高リスクである.QTc <500 ms 例ではLQT2 の女性は年齢に問わず中リスクであり,LQT1 では13 歳未満の男性と13 歳以上の女性は中リスクである.QTc <500 ms のLQT2 男性,LQT1の13 歳以上の男性と13 歳未満の女性,LQTS 遺伝子の病的バリアントを有するがQT 延長を認めない症例は低リスクとされる. *LQT1:膜貫通領域の変異,LQT2:膜貫通ポア領域ミスセンスバリアントはとくに高リスク(Priori SG, et al. 2003 150 )を参考に作成)