p.17 抽出テキスト
LQTS も2 ~3 割存在する. 先天性LQTS は比較的単一遺伝性(monogenic)の疾患と考えられてきた77).しかし,同じ病的バリアントを有する家族でも重症度に違いがあり,たとえばKCNE1- D85N 78)やNOS1AP 遺伝子多型79)のように,比較的有病率の高いコモンバリアントがQT 間隔に影響することが知 られている80).ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果からも,LQTS のリスクにはいわゆる原因遺伝子以外にもコモンバリアントの影響が示唆される67).先天性LQTS に対する遺伝学的検査については,5.2.6 遺伝学的検査で推奨レベルを示す. 4 臨床症状・病態生理 先天性LQTS の典型的な臨床症状は失神,けいれん発作,突然死であるが,先天性LQTS の原因遺伝子に病的バリアントを有する患者の約半数は無症状で,10 ~40%は明らかなQT 延長を認めない36, 38).先天性LQTS 患者の病態は,無症候性から若年での突然死まで患者により多様である. 先天性LQTS に特徴的なTdP(図3)は失神やけいれんの原因となり,VF へ移行し突然死に至ることがある.TdPの多くは自然停止するが,先天性LQTS 患者の5 ~9% に初発症状として突然死あるいは心停止を認める36, 75).失神発作は通常5 ~15 歳に多く認められ,症候性患者の約半数(とくに男児)が12 歳までに,90% が40 歳までに最初の心イベントを経験するといわれる81).また,症候性患者の約半数は運動や興奮にともなって症状を呈し,これらに 表3 先天性LQTS の原因遺伝子 遺伝子表現型機能異常保有率LQTS 原因遺伝子としての確実性KCNQ1 LQTS(LQT1) JLNS IKs(↓) 40 ~55% <1%確実KCNH2 LQTS(LQT2) IKr(↓) 30 ~45%確実SCN5A LQTS(LQT3) INa(↑) 5 ~10%確実CALM1 LQTS(LQT14) Calmodulin /おもにICaL(↑)まれ<1%確実 CALM2 LQTS(LQT15)まれ<1%確実CALM3 LQTS(LQT16)まれ<1%確実TRDN LQTS(LQT17) Triadin / おもに ICaL(↑)きわめてまれ<1%可能性- 大 KCNE1 LQTS(LQT5),JLNS,a-LQTS IKs(↓) <1%限定的(JLNS では確実,a-LQTS では確実性- 大) KCNE2 a-LQTS IKs(↓), IKr(↓) <1%懐疑的(a-LQTS では確実性- 大) KCNJ2 ATS (LQT7) IK1(↓) 2 ~3%限定的(ATS では確実) CACNA1C TS,非TS-LQTS(LQT8) ICaL (↑) 1 ~2%確実性- 中(TS では確実) JLNS:Jervell and lange-Nielsen 症候群,a-LQTS:後天性LQTS,ATS: Andersen-Tawil 症候群,TS: Timothy 症候群(Wilde AAM, et al. 2022 74)を参考に作成) 図2 LQTS における遺伝型の分布わが国のLQTS レジストリにおいて同定された遺伝型.二重/ 複合ヘテロ接合変異:LQTS 関連遺伝子における二重または複合ヘテロ接合変異,UN:不明(Aiba T, et al. 2025 36)より) , 314, 8.3% UN, 220, 5.8% 二重/ 複合ヘテロ接合変異, 47, 1.2% その他,10, 0.3% , 4, 0.1% , 1, 0.0% , 100, 2.7% , 58, 1.5% , 13, 0.3% SCN5A KCNE1 KCNE2 KCNJ2 CACNA1C CALM1, 2 遺伝型KCNQ1 , 1710, 45.4% KCNH2 , 1293, 34.3% , 314, 8.3% UN, 220, 5.8% 二重/ 複合ヘテロ接合変異, 47, 1.2% その他,10, 0.3% , 4, 0.1% , 1, 0.0% , 100, 2.7% , 58, 1.5% , 13, 0.3% SCN5A KCNE1 KCNE2 KCNJ2 CACNA1C CALM1, 2 遺伝型KCNQ1 , 1710, 45.4% KCNH2 , 1293, 34.3%