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p.16 抽出テキスト

[Schwartz スコア]≧3.5)が3 人(0.038%),疑い(同1.0 ~3.0)が8 人(0.10%)であり,約1,000 人に1 人の割合であった41).

2.2 年齢

先天性LQTS の失神や突然死など初回心イベントは,乳児期から成人期まで幅広い年齢に認められる.臨床診断される患者は学童期から思春期に多く,発症年齢は男性8 ± 7 歳,女性14 ± 10 歳といわれ,わが国の診断年齢(中央値)は14 歳である36, 42, 43).ただし発症年齢やリスクは,遺伝子やバリアントによって異なる.胎児・新生児期から乳児期早期にTdP や房室ブロックをともなって発症する重症例の多くは,LQTS2 型(LQT2)またはLQTS3型(LQT3)であるが,まれにLQTS8 型(LQT8)(Timothy症候群) 44, 45)やCALM1~3 遺伝子が原因のLQTS もある46, 47)(後述).

一方,LQTS 患者は成人後も決して心イベントのリスクが消失するわけではない.とくに女性や失神の既往, LQT3 例では40 歳を超えてもイベントリスクが高いといわれる48).また2 次性LQTS 患者でも約1/3 にLQTS 関連の遺伝子にバリアントがみつかり39),高齢者ほど何らかの2 次的要因を合併した際にQT 延長が顕在化し,TdP を生じると考えられる49).

2.3 性別

性差はLQTS 患者のリスクにおいて重要な因子である.小児期(13 歳まで)では男児の方が女児より致死性イベントリスクが高い50, 51),とくにLQTS1 型(LQT1)の男児でリスクが高いといわれる.しかし思春期以降,15 歳を超えると初回心イベント発症率は女性の方が高くなり52, 53),とくに女性のLQT2 患者のリスクが高くなる54, 55).理由として,女性ホルモン(エストロゲン)はQT 延長に作用し56),性周期や周産期におけるQT 間隔の変化に関係し57),催不整脈性を高める可能性が考えられる.とくにLQT2 の女性では性周期とQT 間隔に関連が認められ,プロゲステロン/ エストロゲン比が高いほどQTc が短いとされる58).逆にテストステロンはQT 短縮に関与すると考えられ59, 60),思春期以降では一般的に男性が女性よりQT 間隔(QTc)が短い61).なお男性でも前立腺癌,前立腺肥大,脱毛症に対するホルモン療法でQT 間隔が延長することがある62, 63).このような理由で,とくに思春期~成人における先天性LQTS 患者は女性に多い傾向にあり,女性が後天性LQTS (後述)のリスクにもなる. 2.4 人種・地域差

QTc には人種差があるといわれ,たとえばハワイの住民1,415 人を対象とした安静時12 誘導心電図の解析では,日系人は白人に比べQTc が有意に長いといわれている64). LQTS 関連遺伝子の病的バリアントには人種差・地域差があり,たとえばLQT1 の原因であるKCNQ1 のバリアントの種類・頻度は日本人と欧米人で異なる65).LQT3 の原因であるSCN5A のバリアント,E1784K も日本人では沖縄や南九州地方に多い66).またQT 間隔に影響を与えるコモンバリアント(遺伝子多型) 67)も,その有病率は人種や地域によって異なる68).すなわちQT 間隔の人種・地域差の原因の1 つにはおのおのの遺伝子バリアントの違いが関係している可能性がある.

3 遺伝的背景

先天性LQTS では,診断が確定された患者の約75% に原因遺伝子の病的バリアントが同定される.ほとんどは常染色体顕性(優性)遺伝形式で,感音性難聴をともなわないRomano-Ward 症候群(RWS)だが,まれに常染色体潜性(劣性)遺伝で感音性難聴をともなうJervell and Lange- Nielsen 症候群(JLNS)も認める.1995 年~1996 年にRWS のLQT1,LQT2,LQT3 の原因遺伝子としてKCNQ1 69),KCNH2 70),SCN5A 71)が相次いで報告された.これまでに17 種類の遺伝子が関連遺伝子として報告されたが,かならずしもこれらすべてが先天性LQTS の確実な原因遺伝子とはいえない72-74).実際にLQTS 患者の遺伝学的検査で同定される遺伝子の9 割はKCNQ1, KCNH2,SCN5A であり36, 75),この3 遺伝子の他にカルモジュリンの遺伝子であるCALM1,CALM2,CALM3 とTRDN がLQTS の原因遺伝子として確実とされた74).その他ではKCNE1,KCNJ2,CACNA1C が先天性LQTSあるいはその関連疾患の原因遺伝子とされている76).また, JLNS の原因遺伝子として,それぞれKCNQ1,KCNE1が確実とされている(表3) 74).わが国のLQTS レジストリ3,770 人における遺伝学的解析で同定された遺伝型の分布を図2 36)に示す.

先天性LQTS の浸透率は100% ではなく,病的バリアントを有していてもQT 延長や心イベントのない“ 無症候性”保因者が存在する38).逆に,表現型は遺伝性LQTS でも病的バリアントがみつからない(遺伝型不明または陰性)