GL検索 v0.1.0
画像は 15 ページを描画したものです
page 15

p.15 抽出テキスト

薬物治療,ならびに高リスク例に対するデバイス治療などがある.デバイス治療としては,心臓突然死予防を目的とした植込み型除細動器(ICD)や心不全治療を兼ねた両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)がある32, 33).またβ遮断薬治療に抵抗性のLQTS やCPVT などに対しては,左心臓交感神経切除術(LCSD)が選択される場合もある.適切な治療法は,疾患の種類,症状の有無,突然死の家族歴,各種検査所見などを総合的に考慮して判断される.各疾患・遺伝型・病態に応じた運動制限,薬物治療およびデバイス治療の具体的な適応については各論を参照されたい.

遺伝性不整脈では,遺伝学的検査結果が診断のみならずリスク評価や治療法選択にも影響するようになってきている.病歴や家族歴などの臨床所見に加え,遺伝型やバリ

アント情報を踏まえた,より個別化された治療選択が可能となりつつある.一方で,臨床診断(表現型)と遺伝学的診断(遺伝型)がかならずしも一致しない場合もあり,両者を総合したリスク評価にもとづく治療選択が求められる.さらに,遺伝性不整脈は若年で診断されることが多く,学校生活,就労,スポーツ活動,家族関係などの社会的背景にも十分配慮したうえで治療方針を決定することが重要である.多くの遺伝性不整脈は,現時点の医療では根治が困難であり,治療や経過観察は生涯にわたり継続される.そのため,患者および家族に対して十分なインフォームドコンセントと遺伝カウンセリングを行うことが,治療継続や長期予後の改善につながると考えられる29, 30).

第2章 先天性QT延長症候群(先天性LQTS)

1 概論

QT 延長症候群(LQTS)は,心電図QT 間隔の延長とおもに運動やストレスなどがきっかけでトルサードドポアント(TdP)とよばれる多形性心室頻拍(VT)やVF を生じ,失神や突然死を引き起こす症候群である34, 35)(図1).一般に初発症状は若年(学童~思春期)に多いが,成人以降も発症リスクはあり,小児から成人に至るまで幅広い年齢層に患者を認める36).LQTS の多くは常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる.LQTS の約7 割に心筋イオンチャネルやそれに関連する蛋白をコードする遺伝子に病的バリアントが同定されており,LQTS の診断における遺伝学的検査の役割はきわめて重要である37).

以前は先天性(congenital)と後天性・2 次性(acquired)に分けて考えられていたが,原因遺伝子に病的バリアントを有する先天性LQTS の約3 割はQT 間隔が正常であり38),一方,後天性LQTS と診断された患者の3 割に先天性LQTS の原因となるバリアントを認めることから39),両者の区別はあいまいとなりつつある.近年では,LQTS 関連

遺伝子の種類,バリアントごとに予後が異なることが示されており,治療方針にも影響する.最新のエビデンスにもとづき,わが国におけるLQTS 患者の適切な診断と治療を実施するための指針が求められる.

2 疫学

2.1 有病率

先天性LQTS の有病率は,イタリアの心電図スクリーニングと遺伝学的検査の結果では,新生児約2,000 人に1 人(0.05%)であり4),わが国の乳児1 ヵ月健診における4,285人を対象としたスクリーニングでは,4 人(0.09%)に継続してQT 延長(QTc ≧470 ms)を認めた40).すなわち,先天性LQTS の有病率は新生児1,000 ~2,000 人に1 人と考えられる.一方,わが国の小中学生7,961 人を対象としたコホート研究では,先天性LQTS 確定(LQTS スコア