p.13 抽出テキスト
析を契機として診断される場合とがある.先天性LQTS やCPVT では,運動や興奮を契機とした失神が多く,BrS では夜間・安静時に心イベントが発生しやすいなど,疾患ごとに特徴的な発症状況を呈する.家族歴(できれば3 親等まで)の聴取はきわめて重要であり,かならず家系図の作成を行う.突然死(とくに40 歳以下の若年者,溺水や交通事故によるものを含む),てんかんと診断されていた症例,若年でのペースメーカ植込み,心不全の既往などにはとくに注意を要する3, 28).また,QT 延長やブルガダ型心電図変化,不整脈を惹起しうる薬剤の使用歴についても確認が重要である. 身体所見は多くの遺伝性不整脈では正常であるが, LQTS の一部の遺伝型では感音性難聴,特異的顔貌,四肢異常などの随伴所見を認めることがあり,身体診察も診断上重要である.検査としては12 誘導心電図が基本であるが,QT 間隔やJ 波,ST-T 波形態には日内・日差変動があるため,複数回の記録による評価が推奨される.24 時間ホルター心電図やイベント心電図は不整脈の検出や症状との関連評価に有用である.これらの検査でも原因が特定できない失神を繰り返す症例では,致死性不整脈のリスクを評価したうえで,ただちにICD の適応とならない場合には,植込み型ループレコーダ(ILR)による長期心電図モニタリングが原因検索に有用である.トレッドミル運動負荷試験はLQTS およびCPVT の診断に有用である.一方,Naチャネル遮断薬による薬物負荷試験は,自然発生のコブド型ST 上昇を認めないもののBrS が強く疑われる症例において実施され,コブド型心電図が誘発された場合には診断が確定する.これらの誘発試験は致死性心室不整脈を誘発する危険性があるため,専門医の監視下で実施すべきである.また,電解質異常(K+,Mg2+など)は不整脈発生や心電図所見に影響を及ぼすため,あわせて評価を行う. 遺伝性不整脈では原則として明らかな器質的心疾患を認めないが,二次性不整脈や他の心疾患を除外する目的で画像診断は重要である.心臓超音波検査や心臓MRI はARVC /不整脈原性心筋症(ACM)やラミン心筋症の診断に有用である.電気生理学的検査(EPS)は,遺伝性不整脈の診断ではルーチンに行われないが,BrS では限られた症例においてEPS による不整脈誘発性の評価がリスク層別化の参考として用いられることがある.なお,遺伝性不整脈の発症および表現型は,遺伝的要因のみならず,年齢・性別・環境要因が関与するため,診断に際してはこれらの点を踏まえた総合的判断が必要である. 3 遺伝学的検査,血縁者の検査, 遺伝カウンセリング 遺伝性不整脈において,遺伝学的検査や遺伝カウンセリングは,診断,治療方針の選択,予後予測,患者および家族の疾患理解,さらに家族の健康管理において重要な役割を果たす.これらの基本的な考え方,目的,有用性および留意点については,「2024 年改訂版心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」29)を参照されたい.本章では同ガイドラインにもとづき,遺伝性不整脈に特有のポイントについて概説する.なお遺伝学的検査で同定されたバリアントは,米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の基準にもとづき,病的(pathogenic: P)・病的の可能性が高い(likely pathogenic: LP)・病的意義不明(variant of unknown significance: VUS)・良性の可能性が高い(likely benign)・良性(benign)に分類される.ただし本ガイドラインでは,疾患の原因と考えらえるバリアント(P,LP,および一部のVUS)を「病的」と表現しており,ACMG ガイドラインの分類とはかならずしも一致しない点に留意されたい. 3.1 遺伝学的検査 生殖細胞系列の遺伝情報は生涯変化せず,将来の疾患発症リスクを予測しうるとともに,血縁者間で共有され,子孫に受け継がれる可能性がある.この特性を踏まえ,遺伝学的検査の実施時には,十分な説明とインフォームドコンセントを行うとともに,原則として遺伝カウンセリングが必要である. 遺伝学的検査には,分子遺伝学的診断法,遺伝生化学的診断法,細胞遺伝学的診断法の3 種類があるが29),遺伝性不整脈では主として分子遺伝学的診断法が用いられる. 一般的には,末梢白血球からゲノムDNA を抽出し,現在は多数の遺伝子を同時に解析可能な次世代シーケンサー(NGS)を用いた解析が主流となっている.NGS 解析は,解析範囲により1疾患関連遺伝子に限定したパネル解析,2すべてのエクソン領域を解析する全エクソン解析,3全ゲノム領域を解析する全ゲノム解析に大別される.遺伝性不整脈の診療においては,まず疾患関連遺伝子パネル解析が用いられることが多い.一方で,特定の遺伝子やバリアントを対象とする場合や,NGS で同定されたバリアントの確認目的には,従来法であるサンガー法が