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p.11 抽出テキスト

整脈の診療指針を示すものである.ガイドライン作成組織構成員の利益相反(COI)は巻末の付表に掲載した.改訂にあたっては,既存の日本循環器学会合同研究班による各ガイドラインとの整合性に配慮しつつ,診断技術や治療法の進歩にともなう新たな知見,ならびに近年報告された重要なエビデンスを反映した.また,わが国におけるレジストリ研究の知見も取り入れ,わが国の診療実態にも配慮した推奨を提示した.本ガイドラインが臨床現場における遺伝性不整脈診療の一助となることを期待する.今後,新たな知見の集積に応じて適宜改訂されることが望まれる.

表2 エビデンスレベル

レベル A複数の無作為化介入臨床試験またはメタ解析で実証されたものレベル B単一の無作為化介入臨床試験または無作為化介入でない大規模な臨床試験で実証されたものレベル C専門家および/ または小規模臨床研究(後ろ向き研究および登録を含む)で意見が一致したもの

第1章 総論

1 定義,疫学,機序

遺伝性不整脈は,心筋細胞の電気的興奮および刺激伝導を担う分子機構に関与する遺伝子,すなわち心筋イオンチャネルおよびその関連蛋白(調節蛋白,細胞間結合蛋白,細胞骨格関連蛋白など)をコードする遺伝子の病的バリアントに起因し,明らかな器質的心疾患を認めない,もしくは軽微であるにもかかわらず,心室・上室不整脈や心臓突然死をきたしうる疾患群を指す.海外では,inherited arrhythmia syndrome(IAS),inherited primary arrhythmia syndrome(IPAS),primary electrical diseaseなどの名称で総称されている2, 3).

本ガイドラインでは,遺伝性不整脈として,先天性LQTS, BrS,CPVT,SQTS,ERS,IVF,PCCD,家族性AF,家族性SSS,ならびに遺伝性不整脈が一因となりうる突然死症候群(SUD/SUDI)を対象に含めた.ARVC およびラミン心筋症は,原発性心筋症に分類されるものの,器質的心機能異常が軽微な段階から重症不整脈をきたしうること,また不整脈が臨床経過や予後に大きく影響する点を踏まえ,遺伝性不整脈スペクトラムの一部として本ガイドラインの対象に含めた.遺伝性不整脈はまれな疾患と考えられてきたが,近年の

疫学研究により,一般集団において一定の有病率で存在することが明らかとなっている.先天性LQTS の有病率は約2,000 人に1 人と推定され4, 5),BrS も心電図所見にもとづく調査により約2,000 ~5,000 人に1 人と報告されている5, 6).とくに東アジアで有病率が高く,日本人成人では0.1~0.3% とされている7-9).

また,遺伝性不整脈は心臓突然死の重要な背景因子の1つである.心臓突然死は,米国で年間約20 ~45 万人,欧州で約30 万に及ぶと報告されており10, 11),その約70 ~ 80% は冠動脈疾患などの器質的心疾患に起因する12).若年者では器質的心疾患に起因する割合が低下し,原因不明あるいは不整脈性突然死の比率が相対的に高いと考えられている.わが国における心臓突然死は年間約8 ~9 万人と推計されており,院外心停止レジストリ研究により発生実態が報告されている12, 13).国内の地域疫学調査では,5 ~ 19 歳の若年者突然死発生率は年間約2 ~3/10 万人で14),剖検で明らかな器質的心疾患を認めない突然死が約20 ~ 40% を占め,その一部にLQTS,BrS,CPVT などの遺伝性不整脈が含まれることが示されている15).さらに原因不明突然死例を対象とした遺伝学的剖検(molecular autopsy)研究では,不整脈関連遺伝子の病的バリアントが海外で約20% 前後16, 17),日本人集団でも約10 ~20% に同定されており18-21),遺伝性不整脈が若年者突然死や器質