p.99 抽出テキスト
C2 望ましくない効果C2.1 薬剤副作用(表CQ1-5,6)618, 619) システマティック・レビューの結果,予防的抗菌薬投与の副作用については2件の報告がみつかった.Thornhill 2015 618)では英国の処方・報告制度,Cloitre 2019 619)では フランスの薬剤監視データを用いた報告である.副作用の発生率についても検討した.アモキシシリンの1回投与で致命的な副作用は報告されていない.非致命的な副作用についても,18~23/100万回投与という頻度であり,それらを統合すると,21.4(17.3~26.5)/100万回投与となった618, 619).英国では,アモキシシリンの投与量が3 g単回投与と,わが国での投与量2 g単回投与に比べて多いが,それにもかかわらず副作用はきわめて小さい.クリンダマイシンについてはそれよりは副作用が多かった. C2.2 耐性菌の出現 予防的抗菌薬投与による耐性菌の出現に関する論文はなかった.単回投与による耐性菌の出現はきわめて少ないものと考えられる. C2.3 望ましくない効果のまとめ 予防的抗菌薬投与の望ましくない効果はわずかとした. C3 益と害のバランス コホート内症例対照研究により,IE高度リスク患者において予防的抗菌薬投与のIE発症予防効果は確かだが,中等度リスク患者では証明されなかった.一方,英国の時系列トレンド解析の結果からは,予防的抗菌薬投与を原則中止することによって中等度リスクのIE頻度が上がることが示唆された616).予防的抗菌薬の望ましくない作用はわずかであり,高度リスク群に対する歯科治療前の予防的抗菌薬 投与の益が害を上回るとパネル会議では判断した.中等度リスクに対する予防的抗菌薬投与の益は小さいと判断されるが,望ましくない作用はわずかであり,中等度リスク群に対しても益が害を上回るとパネル会議では判断した. D エビデンス総体の確実性(表CQ1-7) 高度リスク群では,RCTはないものの,コホート内症例対照研究において一貫性を持って予防的抗菌薬投与の有用性が示されることより,エビデンスの確実性はB(中)とした(「改訂にあたって」表5参照).中等度リスクについては,時系列トレンド解析において予防的抗菌薬投与の中止により発症頻度の上昇を示す研究があるのみであり,D(非常に低)とした(「改訂にあたって」表5参照). E 患者の価値観 患者の価値観について研究した論文はなかった. F コスト 集団的観点からの費用対効果についてはC1.2参照.予防的抗菌薬投与に用いられる抗菌薬の薬価は非常に安い(アモキシシリン250 mgで10.4円,2 gを投与したとしても83.2円). G 容認性 いったん発症すると患者にとって重大な負担となるIEを,コストや副作用のほとんどない予防的抗菌薬投与で予防できるとすれば,患者の容認性は高いと考えられる.ただし,わが国において予防的抗菌薬投与は厳密には保険適用とならず,その点が実地医家にとって容認性を低くする要因と考えられる. 表CQ1-4 予防的抗菌薬投与の費用対効果についてのエビデンスの評価 個別研究バイアスリスクグレードを上げる要因非直接性研究コードA B C D E F G H I J K L M N O P Franklin M 2016 0 0 0 -1 0 0 -1 0 +1 +1 +1 0 -2 -2 -1 -2バイアスリスク,グレードを上げる要因,非直接性のA-Pについては「改訂にあたって」表3参照(Fanklin M, et al. 2016 815)をもとに作表) 表CQ1-3 予防的抗菌薬投与がIE 発症率に与える影響についてのコホート内症例対照研究の評価 個別研究バイアスリスクグレードを上げる要因非直接性研究コードA B C D E F G H I J K L M N O P Tubiana S 2017 -1 0 0 -1 -1 0 -1 0 +1 0 +1 -1 -1 0 0 -1 Thornhill MH 2022 0 0 0 -1 -1 0 -1 +1 0 +1 +1 0 0 0 0 0 Thornhill MH 2024 0 0 0 -1 -1 0 -1 +1 +1 +1 +1 0 0 0 0 0バイアスリスク,グレードを上げる要因,非直接性のA-Pについては「改訂にあたって」表3参照(Tubiana S, et al. 2017 798), Thornhill MH, et al. 2022 590), Thornhill MH, et al. 2024 797)をもとに作表)