p.94 抽出テキスト
1 感染性心内膜炎リスクが高度である患者に対する侵襲的歯科治療前の予防的抗菌薬投与を推奨する.推奨の強さ:1(強い推奨) エビデンスの確実性:B(中) 2 感染性心内膜炎リスクが中等度である患者に対する侵襲的歯科治療前の予防的抗菌薬投与を提案する.推奨の強さ:2(弱い推奨) エビデンスの確実性:D(非常に低) 推奨感染性心内膜炎発症リスクの高い患者に対する侵襲的歯科治療前の予防的抗菌薬投与は推奨されるか? CQ 1 ※予防的抗菌薬投与の具体的な方法は「第7章 予防」参照 付帯事項 1 IE高度リスク(IE発症の可能性が高く,重篤化しやすい患者)は,外科的/経カテーテル的人工弁置換患者(生体弁,同 種弁を含む),弁輪リング等を用いた外科的弁形成術後,IEの既往を有する患者,未修復の複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室,完全大血管転位,ファロー四徴症),パッチ,人工材料を用いて修復した先天性心疾患で修復部分に遺残病変(短絡・弁逆流・狭窄等)を伴う場合(術後期間を問わない),体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者, 弁狭窄兼逆流症,大動脈弁狭窄兼逆流症の順である793).採血では凝固異常が認められることが多く,血中FDP, FDP D-dimer,TATの異常が多い.NBTE症例ではAPSや凝固因子欠損症の検索も行う必要がある.NBTEでは弁の病変のみならず,脳脾腎四肢など空間的部位的に多発する塞栓症を伴うことが特徴で,約50%の症例で塞栓症を生じるとされる.IEとの鑑別には菌血症の証明が重要であり,IEの否定に細心の注意を払う必要がある.NBTEでの脳梗塞の神経障害の頻度は片麻痺74%,失語失認51%,視野欠損26%とされる.DWIを用いた,NBTEを含む心内膜炎における脳塞栓症例の検討では,1:単一の病変, 2:単一の動脈支配域に起こる近接した複数の病変,3:点状のびまん性病変,4:大小さまざまなびまん性病変の4パターンに分類すると,全36人中でNBTE 9人の病変はすべてパターン4であった794).NBTEの脳塞栓症では複数の支配動脈にまたがって大小の梗塞が認められることが多いが,逆にこのような空間的多発的な病変では,NBTEを疑うきっかけになるといえる. 治療としては基本的には低分子ヘパリンもしくは未分化ヘパリンの使用が推奨され,ワルファリンはそれらに比べて再発が明らかに多いため使用は推奨されていない795).わが国では低分子ヘパリンを外来で使用することは一般的に行われていないが,未分化ヘパリンを外来で継続するのも困難である.ヘパリンを中止することは再発リスクが上昇するため,半永久的に継続する必要があるのが難しいところである.疣腫や弁肥厚による弁膜病変を要因として急性心不全をきたす症例や,一般的に塞栓リスクが高いとされる10 mm以上の疣腫がヘパリン使用下でも存在する,または再発する塞栓症症例でのみ手術を考慮する.しかしながら,担がん状態が背景にあることが多いことなどから,実際の手術実施に関しては苦慮する場合も多い.このようにNBTEの治療方針については,今後,多方向から検討していくことが必要と考えられる16, 796). 第9章 CQ