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p.92 抽出テキスト

ある.大動脈瘤の部位,性状,患者背景などを鑑みて,外科的手術,血管内治療,またはそれらを組み合わせたハイブリッド治療が行われる.社会の高齢化とともに大動脈疾患は増加しているが,低侵襲治療の進歩に伴い,治療件数は増加している.人工血管またはステントグラフトの感染の頻度は0.5~4%と多くないものの死亡率が高く775),注意が必要である.

人工血管感染は,早期(治療後4ヵ月以内),晩期(治療後4ヵ月から数年後)に分けて定義されることがある776).早期の感染は,主に周術期の感染が原因と考えられる.人工血管が周囲の組織に定着していない時期であり,画像評価において手術後の炎症と感染を判別しにくい時期である.早期の感染経路は,手術施行時の直接の感染,創部感染の波及,周術期の他の感染(尿路感染,呼吸器感染,歯周感染など)による菌血症などがある.原因となる細菌は主にブドウ球菌などのグラム陽性菌であるが777),人工血管感染により消化管と瘻孔を形成する場合にグラム陰性菌や嫌気性菌などの混合感染であることもある.

7.2 危険因子

危険因子として,周術期では,術前の長期入院,尿路感染,蜂窩織炎などの感染症罹患状態,緊急手術や再手術,手術時間の延長,術後の感染症や人工血管の血栓などがある.また,感染症の一般的な危険因子と同様に,悪性腫瘍,ステロイド治療,化学療法,または肝硬変,末期腎臓病,コントロール不良の糖尿病,栄養失調などの免疫力の

低下は,危険因子となる778).

7.3 診断

人工血管感染は,症状,検査,培養,および画像の所見の組み合わせに基づいて診断される.人工血管感染の診断基準にMAGIC診断基準がある(表30) 775).1つの主要基準に加え別のカテゴリーの主要基準/副基準がある場合:確診例,1つの主要基準または異なる2つ以上の副基準がある場合:疑い例とする.MAGIC 基準は,人工血管感染が明らかな患者および疑いのある患者を対象とした前向きコホート研究で検証され,感度は99%,特異度は61%であった779).

症状は,菌血症に伴う発熱,倦怠感などの全身症状が主である.局所の症状は乏しいことが多いが,創感染に伴う創部の痛み,腫脹,大動脈瘤形成に伴う腹痛,血栓形成に伴う下肢虚血の症状,腸管との瘻孔形成に伴う消化管出血などがある.血液検査所見としては,白血球,CRP,血沈,プロカルシトニンなどの感染,菌血症に伴う炎症マーカーが上昇する.

血液培養は,人工血管感染が疑われる場合は必ず実施する.培養での検出率を向上させるために,血液培養は抗菌薬を投与する前の実施が推奨される.抗菌薬投与後であったり検体量が不十分であったりするため,人工血管感染の17%で血液培養が陰性であったという報告がある780).

表30 人工血管感染のMAGIC 診断基準

臨床・外科所見画像所見検査所見

主要基

準・ 手術時に人工血管周囲または動脈瘤嚢

内に排膿 (培養で確認)・ 露出した人工血管または交通性洞を伴う開放創・ 瘻孔の発生(例:大動脈腸管瘻または大動脈気管支瘻)・ 感染部位(瘻孔,真菌性動脈瘤,感染

性偽動脈瘤など)への人工血管挿入・ 術後3ヵ月以上のCTで人工血管周囲の

液貯留・ CTで術後7週間以上経過した人工血管周囲ガス所見・ 連続画像で示された人工血管周囲のガ

ス量の増加・ 摘出された人工血管から検出された細

菌・ 手術中の検体から検出された細菌・ 経皮的に人工血管周囲の液の吸引から

検出された細菌

副基準・ 大動脈人工血管感染の局所的な臨床症

状(紅斑,熱感,腫れ,膿性分泌物,疼痛など)・ 38°C以上の発熱があり,大動脈人工血

管感染が原因である可能性が高い・ 主要基準以外の,疑わしい人工血管周

囲のガス/液体/軟部組織の炎症,動脈瘤の拡大,仮性動脈瘤の形成,局所的な腸壁の肥厚,椎間板炎/骨髄炎, PET/CTでの疑わしい代謝活動,放射性標識白血球の取り込み・ 血液培養が陽性で,大動脈人工血管感

染以外に明らかな原因がない・ 大動脈人工血管感染が原因と考えられ

る炎症マーカーの上昇(赤血球沈降速度,CRP,白血球など)

1つの主要基準に加え別のカテゴリーの主要基準/副基準がある場合:確診例.1つの主要基準または異なる2つ以上の副基準がある場合:疑い例とする(Lyons OT, et al. 2016 775)より) Lyons OT, et al. Diagnosis of aortic graft infection: A case definition by the Management of Aortic Graft Infection Collaboration (MAGIC). Eur J Vasc Endovasc Surg 2016; 52: 758-763. licensed under CC BY-NC-ND 4.0